研究課題
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、市中肺炎の原因菌として高頻度に検出される。病理学的診断では、肺炎球菌が感染した肺の炎症部位において、マクロファージに加えて好中球の集積・浸潤が認められている。これと同時にサイトカインやケモカイン産生量の増加がみられることから、サイトカイン・ケモカインによる自然免疫応答の誘導が肺炎球菌感染の生体応答に重要な役割を果たすことが示唆されている。インターロイキン-17(IL-17)は、好中球の動員に関与するサイトカインとして知られ、病原体に対する生体防御応答に重要な役割を果たしている。本研究ではIL-17を対象とし、肺炎球菌感染における生体防御機構の解明を目的とした。肺炎球菌を感染させた際、IL-17A欠損マウスは野生型マウスと比べ高感受性を示した。一方、IL-17F欠損マウスは抵抗性を示すことが明らかとなった。IL-17が病態形成に及ぼす影響を調べるため、野生型、IL-17A欠損及びIL-17F欠損マウスに肺炎球菌を感染させ、気管支肺胞洗浄液(BALF)及び肺組織での遺伝子発現量を解析した。その結果、野生型と比べ、IL-17A欠損マウスではリポカリン産生が増加したのに対し、IL-17F欠損マウスでは産生低下が認められた。以上の結果より、肺炎球菌肺炎の病態形成において、IL-17AとIL-17Fは重要な役割を果たすが、逆作用をもつことが示唆された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nat Commun.
巻: 12 ページ: 94
10.1038/s41467-020-20307-9