本研究期間において、主にClostridioides difficileとB細胞活性化因子(BAFF)及びIgAとの関連いついて研究を行なった。 臨床的な評価としてClostridioides difficile感染者の糞便中のIgA計測を試みたが、十分な症例数が集まらず、現状は計測を継続している状況であり、有意な結果は見いだせていない。 一方、基礎的な研究については特にC.difficileの病原因子であるトキシンBの免疫超性能について新たな知見を得ることが出来た。一つはトキシンBはC.difficile自身が有する鞭毛の一構成成分であるフラジェリンのみならず、他の微生物(サルモネラ菌など)からのフラジェリンとも強調し、TLR5の刺激を介し、腸管上皮細胞(Caco-2細胞及びHT-29細胞)からIL-8やCCL-20などの炎症性サイトカインの産生を大幅に亢進することが確認された。また、近年腸管においてBAFFはその産生によって腸管粘膜免疫の重要な要素であるIgAの産生を低下させることが示されている。今回、我々はTHP-1細胞へIFN-γの刺激を加えることでBAFFが産生され、更にIFN-γと同時にトキシンBの刺激を加えることでBAFF産生が亢進する事を確認した。またそのメカニズムとして、トキシンBの存在によりIFN-γ刺激によるSTAT-1のリン酸化が亢進することを確認した。すなわち、JAK-STATシグナルがトキシンBの刺激により亢進し、結果としてBAFF産生亢進が導かれるものと考えられた。これらの結果から、C. difficileトキシンBには、Rho不活性化に伴う腸管上皮細胞間のタイトジャンクションの破壊に加え、腸内細菌との協調による局所の炎症亢進、またBAFF産生亢進による粘膜免疫の抑制を来すなど、免疫調整機能を有し、結果病原因子として機能しているものと考えられた。
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