研究課題/領域番号 |
17K16239
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福島 紘子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30624986)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム解析 / 小児がん / 胚細胞変異 / 予防医学 / がん発生メカニズム |
研究実績の概要 |
小児がんは25,000人に1人のまれな疾患であることに加え、小児期に発生する疾患は環境等の外的要因よりも患者個人の体質によることが大きいことは、一般的に広く受け入れられている。これまでのがんゲノム解析はがん細胞そのものの体細胞変異に研究が偏重しており、患者個々の胚細胞系列の解析は注目されてこなかった。近年になり、家族歴のない患者で患者個人の遺伝学的異常(胚細胞変異)が同定されることが報告されてきているが、非常に限定的である。我々はこれまでに患者個人の遺伝学的解析に取り組んでおり、今回本研究で発がん関連遺伝子の解析を進めている。発がん関連ゲノムパネルをこれまで46遺伝子とし、解析を進めてきた。パイロットで解析を行った34患者のシークエンス解析では、2,782のバリアントが同定され、この内サンガー法で確認されたまれ(MAF<0.001)な変異は15か所であった。この内病的変異と同定できたのは1箇所のみで、病的意義不明が8か所、良性が2箇所、既報にない変異が4か所であり、既報のないバリアントの病的意義の解析を今後進めていきたい。更にこれまで用いていた46遺伝子のパネルから、より有用と考えられるパネルの再設計を行った。過去に小児がん患者で見つかった34遺伝子、DNA修復関連18遺伝子を新たに加え、約100程度の遺伝子数に拡大し、総塩基長は約500kbとした。2017年度も小児がん患者ゲノムの収集を引き続き行い、新規で27例の協力者を得た。以前からの協力者と合わせ、70症例分のタイピングを行った。患者内訳は急性白血病29名、脳腫瘍5名、胚細胞腫瘍2例、横紋筋肉腫1名、ユーイング肉腫1例、肝芽腫2例、神経芽腫4例、悪性リンパ腫4例、腎腫瘍1例、網膜芽細胞腫2例、がん家系血縁者5名、そのほか14名であった。みつかった一部のバリアントはダイレクトシークエンスを行い、確定が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、ゲノムのシーケンスを行えている。 しかし、遺伝子パネルの再構築を行うなど、当初から予定外の追加項目を今年度行ったこともあり、シーケンス自体の目標症例数の達成がかなわなかった。 2018年度はさらなる症例数の蓄積と解析を進めていくこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム解析用アプリケーションソフト、PC等を整備しゲノム解析の環境を整える。 年々発表されてきているデータをもとに再解析も行っていく
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子パネルの再構築に時間を要し、若干の遅れが生じたことから、解析用アプリケーションソフトウェアの購入や、シーケンス関連消耗品の購入を次年度へと持ち越した。
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