昨年度に引き続き、エメリードレフュス症候群の病態解明のため、原因蛋白であるエメリン、ラミン、及びネスプリンをノックダウンしたラット新生仔心筋、及びiPS細胞を用いて、核内カルシウム動態、核膜陥入層の評価、及び本疾患の下流シグナルの解析を行った。昨年度に引き続き、本研究室にて作製した、エメリードレフュス型筋ジストロフィー(EDMD)由来iPS細胞から分化させた心筋細胞を用いて本疾患の下流シグナル解析を行った。核内カルシウム動態の変化によりCAMKⅡが活性化しNFATの核内移行が促進することが予測されたため、免疫染色を行ったが、NFATの核内移行の割合には変化が認められなかった。また、ERKの細胞内分布を同様に免疫染色にて評価を行ったところ、ERKの分布については、有意な変化は認められなかったものの、pERKの核内の蛍光強度の増強が確認された。このため、pERKについてウエスタンブロット法を行ったが、pERKの蛋白発現について有意な変化は認められなかった。EDMD由来iPS細胞心筋において、血清存在下で、ヒストン脱アセチル化酵素のひとつであるHDAC3の核内移行率が低下している可能性が免疫染色にて示唆された。 また、ラミンA/CをsiRNAを用いてノックダウンさせたラット新生仔心筋を作成することができた。ラミンA/Cをノックダウンさせたため、核膜陥入層の評価には、ラミンB1を免疫染色し、核膜陥入層、核面積の評価を行ったところ、核膜陥入層が減少し、核面積が増大することを確認することができた。しかしながら、ネスプリンノックダウンさせたラット新生仔心筋を作製することはできなかった。 今後は、カルシウム動態とHDAC3の関係性の検討、及びラミンノックダウンモデルを用いて、核内カルシウム動態の変化をエメリンノックダウンモデルと同様に評価していく予定としている。
|