ビフィズス菌をプラットフォームとしてWT1蛋白を表層に発現させた経口がんワクチンがWT1ペプチドワクチンより強い抗腫瘍効果を持つことがマウスモデルにおいて確認されている。この抗腫瘍効果の違いを解明するため、フローサイトメトリー法を用いてWT1発現ビフィズス菌とWT1ペプチドワクチンを投与したマウス末梢血中のWT1特異的キラーT細胞割合を比較した。WT1発現ビフィズス菌では長期的にWT1特異的キラーT細胞が維持されていた。またWT1蛋白のアミノ酸配列を11個ずつに分け、オーバーラッピングペプチド法を用いてエピトープの検出を試みたところ、10エピトープが候補とされた。このうちのいくつかはWEB上でヘルパー機能が推測される。これらのことがWT1発現ビフィズス菌がWT1ペプチドワクチンより有効である要因と推測された。また、マウス膠芽腫細胞株をマウスの脳に同所移植し、抗CTLA-4抗体と併用することにより生存率の有意な改善が見られた。これはヒトでの実臨床により近い形になっており、将来的に経口がんワクチンが使用できる場面が増えることを意味する。さらに腸管免疫を介した機構について、マウスの動物実験において、パイエル板よりむしろ腸間膜リンパ節においてWT1特異的キラーT細胞が増加することを発見した。脾臓細胞を用いた膠芽腫細胞へのキリングアッセイによりWT1ペプチドワクチンよりも高い抗腫瘍効果が認められた。またマウス肺がん細胞株にWT1蛋白を強発現させる肺がんモデルの作成をおこなえた。今後本細胞株にHLAを導入し、ヒトHLA発現マウスに接種し本経口ワクチンの有効性を検討するモデルマウスの作製を予定している。またWT1経口がんワクチンにおける腸管免疫の有効性のさらなる機序の解明および抗CTLA-4抗体と併用時の腫瘍の免疫状態の解明を今後の研究課題としていきたい。
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