福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は重度の筋ジストロフィーに脳の形成異常や眼奇形を伴う本邦特有の小児の希少難病でいまだ治療法がない。患者はほぼ一生歩行を獲得せず、重度の知的障害を合併する。一方この挿入変異ホモ型の患者には、わずかに歩行が可能な例や、会話が可能な軽症例が存在し、その表現型は患者間で大きな差があるがその理由は未解明である。 本研究の目的はこの表現型の差を引き起こす因子を解明・同定し、新規治療法を開発することである。疾患特異的iPS細胞などの細胞系を用い、スプライシング活性や糖鎖・糖転移活性を検討する。 本年度はフクチン遺伝子の配列決定のため、ロングリードの配列同定が可能な次世代シークエンサーであるナノポアをもちいて患者及び両親(保因者)の挿入変異配列の配列を検討した。結果、いまだエラー率や挿入配列内の繰り返し配列の解読に難渋したため、個人間での配列の差と臨床症状の相関についての検討までにはいたらなかった。しかし、この技術をもちいて、今後はRNAの配列を決定し、発現での表現型の差も検討を予定している。 また患者フクチン遺伝子をエピジェネティックに調節する因子の有無を、メチル化解析やヒストン修飾の検討より探索することを予定し予備検討を行っている。 重症化因子では、αDG活性の差がかかわっていることをつきとめたため、今後はαDG活性に関わる因子について、さらに検討を予定している。
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