研究課題/領域番号 |
17K16264
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
藏田 洋文 鳥取大学, 医学部, 助教 (00774837)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発熱 / サイトカイン / 痙攣 / 血液脳関門 / 急性脳症 |
研究実績の概要 |
急性脳症の病態は、興奮毒性が主体とされるものや、サイトカインストームを主な病態とするものなどが推定されている。急性脳症の研究が遅れている主要な原因の一つは、良いモデル動物が存在しない事である。本研究は予後不良とされるサイトカインストームを主な病態とする急性脳症モデル動物を作出し、発症メカニズムの解明や治療方法の開発を目指すものである。 平成29年度は実験動物(種、系統、日齢)、LPS投与量、加温処理のタイミングなどの条件設定を行った。 生後8日目のICRマウスに大腸菌由来LPS (50~100μg/kg)の腹腔内投与、ヒーターによる加温を行い、発熱、痙攣を誘発した。脳摘出直前にFITC溶液を灌流させ、皮質における血管原生浮腫の評価を組織学的に行った。サイトカインストームを主な病態とする急性壊死性脳症(ANE)剖検例の報告では、血液脳関門(BBB)破綻による血管原生浮腫の所見を認めている。我々はFITCに染まる脳組織の面積を定量化することで比較を行ったが、少量のLPS投与、加温を行った群は、コントロールに比して有意に皮質におけるFITCの血管外漏出を認めた。また、一部の個体では皮質に左右非対称の虚血性変化を疑う組織像を得た。 LPS投与、加温により幼若マウスの脳組織においてBBB破綻、血管原生浮腫を組織学的に示すことができ、ANE類似の脳組織像を得ることができた。ANEと同じく、サイトカインストームの関与が推定されているHemorrhagic shock encephalopathy 症候群 (HSES)では、急性期の頭部画像で細胞性浮腫を示唆する所見を認める症例があり、急性期以降には脳組織のネクローシス、虚血性変化を認めることがあるとされている。今回、一部の個体の皮質に認めた虚血性変化に関してはHSESの脳組織に類似している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幼若マウスにLPS少量投与、加温処置を加えることで、当初の目標であった脳組織におけるBBB破綻の組織像を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
急性脳症モデル動物としての妥当性の評価、治療方法の検討などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付決定前に必要な実験機器、試薬を既に購入していたため。翌年度分と合わせて、引き続き試薬などの物品購入費、動物飼育料、研究成果発表のための経費として使用する。
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