溶血性尿毒症症候群(HUS)に罹患し、一過性の腎障害から回復した後、10 年から 20 年以上長期経過した遠隔期に、高血圧を合併し、腎機能障害が顕在化する症例が存在する。HUS罹患後の長期フォローの必要性、特に蛋白尿、腎機能血圧管理の重要性を論じた報告は散見されるが、それらを実証した基礎的研究は少ない。HUSによる急性腎障害から回復後の長期観察において、慢性腎障害(CKD)の進展因子としてのDAMPs/PAMPsがいかに影響するかの詳細も不明である。①HUSマウスモデルを用いて、急性期の一過性腎機能低下後の長期観察を行い、マウスモデルにおける長期腎予後の検討する。②長期観察したHUSマウスモデル(HUS-CKDマウス)に対して、LPS等の外因性抗原刺激を行い腎機能の再増悪を検証する。③長期観察したHUS-CKDマウスをLPS刺激群と対照群(生食群)に分け、比較検討を行った。6週齢のC57BL/6マウスに対して、LPS(100μg/kg)+ Shiga Toxin2(100ng/kg) または生理食塩水を単回腹腔内投与し、各群共に60週齢まで経過観察した。40週齢時にLPS100μg/kg、対照群には生食の追加投与を行った。経時的に体重変化、腎機能検査、腎病理組織学的検討を行なった。60週齢においてStx2+LPS投与群は、対照群に比して、体重減少率が高く、腎機能障害および腎組織学的病変も高度であった。また40週齢においてLPS追加投与を行った群では、対照群に比して体重増加が少なく、腎糸球体の硬化病変および尿細管病変が顕著に認められた。以上から、早期にLPS+ Shiga Toxin2による腎障害をきたした症例は、発症後長期間を経て、腎機能低下をきたす可能性がある。また、発症後長期間を経て、感染などのよるLPS刺激を受けた症例は、急性再増悪をきたす可能性が示唆された。
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