ウイルス性急性脳症は、インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなどのウイルス感染後に急激な意識障害やけいれんを伴って発症する神経予後の不良な疾患である。その主病態は炎症性サイトカインの上昇に伴い、血液脳関門が破壊され、血管透過性亢進が亢進することによる非炎症性の脳浮腫であると考えられている。本研究では、脳血管内皮細胞とアストロサイトを用いた3次元細胞培養系を用い、細胞リアルタイムモニタリングシステムを用いた血管透過性の動的評価系を確立した。本評価系は、経時的な経内皮細胞電気抵抗値測定と蛍光標識デキストランを用いた溶質透過性試験、およびタイトジャンクション関連タンパクの蛍光免疫染色から成り立つ。最終年度であった平成31年度は、これまで確立した評価系を用いて、炎症性サイトカインの一つであるTNFα濃度依存性に血管内皮細胞の電気抵抗が低下し、デキストラン溶質透過性試験では血管透過性が亢進すること、また、電気抵抗値やデキストランの透過性が回復するまでの時間が延長することが示された。又、脳血管内皮細胞間に存在し血管透過性を制御しているタイトジャンクションの一つであるクローディン5の発現がTNFα濃度依存的に低下していた。本研究により、急性脳症における血管内皮細胞障害をin vitroで再現、評価することが可能となり、依然として不明な点が多い急性脳症の病態解明や新たな治療戦略の検討及び治療標的の探索をすることが可能となる。
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