研究実績の概要 |
未熟児動脈管開存症の確実な治療法は未開発で,早産児の動脈管閉鎖の制御メカニズムの解明は急務である.動脈管が解剖学的閉鎖を達成するには,動脈管の中膜を形成する血管平滑筋が収縮し,かつ内膜肥厚が十分生じることが不可欠であるが, 早産児の動脈管内膜肥厚は出生時不十分で解剖学的閉鎖に至りにくいことが多い. 研究代表者はヒト動脈管とラット動脈管の網羅的遺伝子解析を行い,内膜肥厚を誘導する有力な候補遺伝子としてフィブリン1 を同定した. このフィブリン1による動脈管肥厚機序の解明が、本研究の目的である. これまで,当初の予定通り,In vitroでPGE2-EP4の下流シグナルにおいてフィブリン1が増加する機序を明らかにした. フィブリン1が,動脈管内膜肥厚部に局在し,しかも胎児の成熟とともに増加することを組織染色やPCRで証明した. また, フィブリン1による内膜肥厚は、動脈管平滑筋細胞が内膜側へ遊走することで生じるが, その際に共役して働く分子であるADAMTS-1とバーシカンについても3分子の共役性の一端を証明できた.また, フィブリン1の細胞遊走能促進作用が,siRNAでFbln1を抑制することによって抑制されることをスクラッチアッセイによって証明した. In vitroで,フィブリン1の内膜肥厚機序をおおむね明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り,当該年度でIn vitroで,フィブリン1の内膜肥厚機序をおおむね明らかにすることができた. また,現時点で,遺伝子欠損マウスを用いたIn vivoでの実験に当初の予定通り取り掛かっている.
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今後の研究の推進方策 |
当初,In vivo実験として、フィブリン1リコンビナントタンパクの胎児への投与を計画していたが, 物質の安定性や投与経路, 代謝に関する考察が現時点で不十分である.このためまずは,In vitroでの実験で明らかになったPGE2-EP4シグナルの下流でフィブリン1制御に関わる分子をターゲットとした薬剤を用いて,動脈管内膜肥厚を制御できるかについてvivoで検証を進めていく予定である
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