ラット動脈管の網羅的遺伝子解析によって、内膜肥厚を誘導する有力な候補遺伝子として、ファイブリン1を同定し、この分子に着目して、ファイブリン1が動脈管内膜肥厚に及ぼす影響に関して、研究を進めてきた。初年度は、動脈管細胞内で、ファイブリン1が発現させるシグナルの同定を行った。EP4アゴニストや、各種インヒビターを用いて検討した結果、ホスホリパーゼCなどの関与を証明することができた。また、細胞遊走因子であるバーシカンとファイブリン1の共役作用の証明については、EP4遺伝子欠損マウスの免疫染色や、siRNAを用いた細胞による細胞遊走実験を行い、ファイブリン1とバーシカンの共役が動脈管内膜肥厚の発生に重要であることを証明することができた。 最終年度は、当初in vivoで行う実験計画として、母体ラットを帝王切開し、胎生19日胎仔にファイブリン1リコンビナントタンパクを投与し閉腹、48時間後に再開腹し、胎仔の動脈管内膜肥厚を評価する予定であったが、リコンビナントタンパクの体内動態など、検討が難しかった。このため、ファイブリン1遺伝子欠損マウスを入手し、新生児マウスの動脈管内膜肥厚を評価した。結果として、ファイブリン1遺伝子欠損マウスでは、野生型と比較して、内膜肥厚が有意に抑制されていることを見出した。ファイブリン1遺伝子欠損マウスを用いて検討することができたため、当初予定していた器官培養による検討は行わなかった。
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