本研究の目的は、1)新規融合遺伝子OFD1-JAK2の白血病発症機序をin vitroおよびin vivoで明らかにする事、および2)OFD1-JAK2陽性細胞に対するJAK2阻害剤単剤および既存化学療法薬との併用の有効性をin vitroおよびin vivoで明らかにする事である。 JAK2を含むALL関連融合遺伝子はこれまで複数報告されているが、ALLの発症にどのように関わるかは十分には検討されておらず、今回新たに同定されたOFD1-JAK2融合蛋白がどのようにALLの発症に関わるかを明らかする意義は高いと考えられる。また、JAK2関連融合遺伝子陽性ALLは小児期から若年成人まで見られ、いずれも、予後不良であり、有効な新規治療法の開発が急務である(NEJM 2014;371:1005-1015)。JAK2阻害剤の有効性が期待されるが、その効果については、一定 した見解を見ない。そこで、JAK2阻害剤を代表とする分子標的薬の効果について樹立した細胞株を用いて、検討を行い、その有効性に関する基礎的なデータを得る予定である。 近年の網羅的遺伝子解析研究の進歩により、小児ALLの治療標的となりうる遺伝子異常が多く同定されている。京都府立医科大学小児科は、国内外の研究グループと共同し、本邦の小児ALLの遺伝子解析研究において中心的な役割を担い、ALLの新規キナーゼ関連融合遺伝子としてOFD1-JAK2を同定した。チロシンキナーゼの再構成を伴うALLでは、チロシンキナーゼ阻害薬が有効な例があることは知られているが、こうした分子標的薬の感受性は個々の融合遺伝子毎に様々であり、機能解析実験による検証が不可欠である。JAK2関連の融合遺伝子の報告は多いが、機能解析研究は不十分であり、本研究で白血病発症機序を解明し、分子標的薬の感受性を明らかにする意義は大きい。
|