研究課題/領域番号 |
17K16278
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
浜 武継 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00508020)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 多発性嚢胞腎 / Gタンパク / Gタンパク受容体 / アクセサリータンパク |
研究実績の概要 |
Gタンパクは細胞内に存在し、シグナル伝達を制御している。リガンドが細胞膜に存在するGタンパク受容体 (GPCR) に結合すると、GタンパクがGαとGβγに分かれ、それぞれが細胞内にシグナルを伝達する。最近、GPCRが活性化されなくても、Gタンパクに直接作用し、GαとGβγそれぞれのシグナル伝達経路を活性化させるアクセサリータンパクの存在が明らかとなった。アクセサリータンパクの1つであるActivators of G protein signaling (AGS) は、正常腎では発現が少ないが、腎機能障害時に増加すると言われている。今回、そのAGSの1つであるAGS7の、多発性嚢胞腎での役割について検討した。 嚢胞性腎疾患モデルであるcpkマウスの腎臓に、AGS7が、コントロールと比べどの程度発現しているのかを評価するために、cpkマウス、及び、コントロールマウスから腎臓を摘出した。cpkマウスは、生後約1か月で死亡するため、21日齢で腎臓を摘出することにした。 摘出した腎臓をパラフィン包埋し、AGS7のタンパクの発現レベルを免疫組織化学染色で評価した。その結果、cpkマウスでは、腎嚢胞の上皮細胞の核にAGS7が強く発現していた。一方、コントロールマウスでは、尿細管上皮の細胞質に弱く発現していた。 次に、摘出した腎臓からタンパクを抽出し、AGS7のタンパクの発現レベルをWestern Blottingで評価した。AGS7のバンドは、コントロールマウスで強く発現していた。 最後に、摘出した腎臓からRNAを抽出し、AGS7のRNA発現レベルをReal Time PCRで評価した。その結果、コントロールマウスに比べ、cpkマウスで有意に発現レベルが増強していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、動物実験と細胞実験を行う予定としている。細胞実験を開始するために、まず実験室の立ち上げが必要であるため、少しずつ施設拡張を行っているところである。そのため、動物実験を優先して行ってきた。動物からのサンプルは順調に集めることができており、実験の手技も現在のところ、問題なく行うことができている。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞実験を行うことができる環境を整えることが必要である。また、本年度に行った動物実験では、染色の結果から、cpkマウスでAGS7の発現が腎嚢胞上皮の核で増強していることが予想されたが、Western Blottingでは、コントロールマウスでAGS7の発現が強いという逆の結果が得られている。ただし、Westen Blottingで見られるAGS7のバンドは、cpkマウスでは2本に分かれており、single bandではない。非特異的なバンドとAGS7のバンドと混同している可能性もある。そのため、タンパクを細胞質、核、細胞膜、とで分離し評価することで、AGS7の発現場所をさらに同定できる可能性が示唆された。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、細胞実験の設備投資に多額の費用がかかる可能性がある。細胞実験室の環境を整えるのに時間がかかっており、まだ高額な機器類や細胞の購入などに至っていない。また、本年度に行った動物実験は、ある程度本研究室が所有していたものを利用することができ、新規に購入するものが少なかったことも理由として挙げられる。
|