研究実績の概要 |
前年度までの結果からHHV-6B再活性化群(A群)17例、皮膚GVHD群(B群)13例、HHV-6B再活性化+皮膚GVHD群(C群)11例、ともに認めなった群(D群)18例の4群に分類した。対象者から造血細胞移植後1, 2, 3, 4, 6週に採取した血清から、MILLIPLEX(Merck社)を用いて、11種類のサイトカイン(IFN-γ、IL-10、IL-12、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-6、IP-10、TNF-α、VEGF)を測定し、比較検討した。コントロール群に比してHHV-6B再活性化群は第2週でIL-2, 4, 6, 10、第3週でIL-10, IP-10、第6週でIP-10, TNF-αが、皮膚GVHD群は第2週でIL- 4, 17、第3週でIL-4, 10, IP-10、第6週でIL-10, 17が有意に上昇していた。B群ではA群にして比して第6週のIL-10が有意に上昇していたが、HHV-6B再活性化やGVHDの好発時期である2~4週では有意な差はなかった。 レーダーチャートを作成し、A群とB群で第1,2週では図形は類似したが、第3,4,6週で偏位を認めた。 HHV-6Bは同種造血幹細胞移植患者で移植後2から4週間に再活性化し、急性GVHDの好発時期に一致し、臨床症状からHHV-6B再活性化に伴うウイルス性発疹症と真の皮膚GVHDの鑑別は極めて困難である。急性GVHDに対してはステロイド治療を行うが、HHV-6B再活性化に対しては抗ウイルス薬の投与が必要であり、ステロイド治療はむしろ感染を助長する危険性がある。本研究によって移植後のサイトカインプロファイルを行うことで両者を鑑別できる可能性を見出した。このことは移植後種々の合併症に対する適切な治療選択に有用であるだけでなく、不要な治療を回避することで医療費の削減にも寄与する可能性がある。
|