研究課題/領域番号 |
17K16283
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
服部 文彦 藤田医科大学, 医学部, 客員助教 (50774337)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | HHV-6 / 突発性発疹 / real-time PCR |
研究実績の概要 |
発熱を主訴に大学病院ER、小児科外来を受診した5歳以下小児の中で血液検査を実施した症例(書面での研究参加の同意を得た症例)について、血液検査終了後の残余検体(全血、血清)を中央検査室から収集した。目標症例数は年間70例であったが、平成30年度は380例について検体収集した。収集した臨床検体を用いて、下記に示すウイルス学的検査を実施しHHV-6B初感染を確定した。 ① 末梢血単核球からのウイルス分離:患児末梢血から比重遠心法にて単核球を分離し、臍帯血単核球との混合培養する。細胞変性効果(cytopathic effect:CPE)が出現した後、抗 HHV-6 B単クローン抗体を用いて染色しHHV-6B分離を確認する。 ② Real-time PCR法による血清中HHV-6B DNA検出:血清からDNA抽出後、real-time PCR法にてHHV-6 DNAを検出する(=活動性感染)。 ③ 血清中HHV-6 IgG抗体測定:血清中HHV-6 IgG抗体価を間接蛍光抗体(IFA)法により測定する。 ウイルス学的にHHV-6B初感染と診断された症例(上記①あるいは②のいずれかが陽性、かつHHV-6IgG抗体価が<8倍の場合)について、患者背景、臨床症状、検査データ、治療内容について後方視的にデータを収集した。また、患者背景(同胞数、離乳食の口移しの有無、集団保育歴など)や臨床症状(発熱期間、解熱後の発疹の有無など)について、カルテ記載のみで情報収集が困難な項目については、往復ハガキを用いたアンケート調査を行い情報収集した。収集した患者情報よりHHV-6B初感染の初感染年齢と臨床像(有熱期間、解熱後の発疹の有無)について統計学的解析を実施した。研究成績については、国内、国際学会で本研究成果を公表し、最終的に英文誌(PIDJ)へ投稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における平成30年度の目標検体数は70例であったが、年間で380例の検体を収集できており、当初の予定以上のペースで収集できている。収集した臨床検体については当初の予定通りのペースでウイルス学的検査(①末梢血単核球からのウイルス分離、②Real-time PCR法による血清中HHV-6B DNA検出、③血清中HHV-6 IgG抗体測定)を実施できている。ウイルス学的にHHV-6B初感染と診断された症例(①あるいは②のいずれかが陽性、かつHHV-6IgG抗体価が<8倍の場合)について、患者背景、臨床症状、検査データ、治療内容について後方視的にデータを収集しているが、平成30年度までの症例については診療録とアンケート調査での情報収集は終了している。HHV-6B初感染の初感染年齢と臨床像(有熱期間、解熱後の発疹の有無)について統計学的解析を実施した。現時点でのHHV-6B初感染例の年齢中央値は1歳3ヶ月であり、高年齢化してきていることが示唆される結果を得られている。平成30年度においては国内学会(ヘルペスウイルス研究会など)、国際学会(21th European Society for Clinical Virology)にて本研究の現在までの成果について公表した。最終的な結果は英文誌(PIDJ)に投稿し、アクセプトされた(2019年10月に掲載予定)。以上より、平成30年度については研究の進行に遅れは生じておらず、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度に引き続き、発熱を主訴に大学病院ER、小児科外来を受診した5歳以下小児の中で血液検査を実施した症例について、血液検査終了後の残余検体(全血、血清)の収集を継続する。得られた臨床検体について3つのウイルス学的診断法(①末梢血単核球からのウイルス分離、②Real-time PCR法による血清中HHV-6B DNA検出、③血清中HHV-6 IgG抗体測定)を用いてHHV-6B初感染症例を確定する。また、全ての血清検体についてreal-time PCR法で他のヘルペス属(CMV、EBV、HHV-7)の DNA量も測定する。これらのウイルスDNAが血清中から検出されれば活動性感染を意味するため、5歳以下発熱児のコホート内で4種のヘルペス属ウイルスの活動性感染が占める割合を明らかにする。ウイルスDNAが検出された症例については急性期抗体価(IgG、IgM)を計測し、HHV-6Bと同様に初感染例と再活性化例の区別を行う。診療録やアンケート調査(往復ハガキを使用)により各感染症の臨床情報の収集を継続して行う。患者情報を収集した後に、臨床情報、患者背景、臨床検査データを整理し患者背景と臨床像(有熱期間、解熱後の発疹の有無、伝染性単核球症の有無)、検査データについて統計解析する。 平成31年度には、研究成績について、国内、国際学会で本研究成果を公表し、最終的に英文誌へ投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29~30年度にはHHV-6Bの解析を中心に施行してきたため、検査に必要な試薬などの費用が予定より少なかった。しかしながら、平成31年度は、HHV-6B以外のヘルペス属(EBV、CMV、HHV-7)の解析を中心に行う予定であり、解析内容はreal-time PCRのみならず外部機関への抗体価測定も予定している。そのため、平成31年度において、DNA抽出、PCR、抗体価測定に多額の物品費が必要となる予定である。
|