小児アレルギー克服のため、本課題では酸化ストレス応答の鍵分子であるNRF2に着目し、2型自然リンパ球活性化におけるNRF2の貢献を解析するとともに、その臨床応用に取り組む。昨年度までに、1)NRF2はILC2増殖を負に制御していること、2)NRF2活性化でILC2数が減少すること、3)この効果はステロイドと同等であったことを報告した。 計画当初、骨髄前駆細胞からのILC2誘導とin vivoでのILC2分化能を解析する予定であったが、in vitroでのILC2誘導に顕著な差を認めなかったため、in vivoでの実験は行わなかった。そこで本年度は、昨年度に明らかとなったNrf2活性化によるILC2減少効果の詳細を検討することとした。喘息治療に頻用されるステロイドは、ILC2のアポトーシスを誘導するのに対し、NRF2活性化ではアポトーシスの亢進は認めなかった。さらに、多様な細胞死に対する阻害剤を用いて検討したが、既存の細胞死プロセスのどれにも当てはまらなかった。NRF2活性化剤によるILC2細胞死は新規細胞死メカニズムである可能性がある。さらに、アレルギー性肺炎症を誘導したマウスにNRF2活性化剤を投与すると、肺のILC2および好酸球数が減少した。病理組織解析でも、好酸球浸潤の軽減と粘液産生細胞陽性率の減少を認めた。この治療効果はNRF2特異的であり、NRF2活性化剤は新規アレルギー治療薬となる可能性が考えられた。 これら知見は、ステロイドと異なる機序で同等の治療効果を得られる点、ステロイドに比して小児に対して安全である点などから、小児喘息に対する治療選択肢のひとつとしてNRF2活性化剤は小児アレルギー克服に貢献すると考える。また、喘息にとどまらず多様なアレルギー疾患に対しても有効である可能性がある。
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