研究課題/領域番号 |
17K16289
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
直 亨則 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 研究員 (00781741)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒトメタニューモウイルス / RSウイルス / 宿主因子 |
研究実績の概要 |
本研究では最新の遺伝子編集技術(CRISPR/CAS9システム)を用いて作成したゲノムワイドノックアウト細胞ライブラリーを利用して、パラミクソウイルス、及びニューモウイルスのウイルス感染・増殖に必要な宿主因子を同定することを目的としている。昨年度はRSウイルスとHeLa細胞ライブラリーを用いて、RSウイルスの感染・増殖に必要な宿主因子候補250程度を同定したため、今年度はヒトメタニューモウイルス(HMPV)を用いて実験を行った。 HMPVはVeroE6細胞等のサル腎由来細胞には比較的高い感染性を示すが、HeLa細胞等ヒト由来細胞への感染性は限定的である。そのため、HeLa細胞ライブラリーに繰り返しHMPVを感染させるとともに、HeLa細胞ライブラリーをHMPV感染VeroE6細胞と共培養することにより、HeLa細胞ライブラリーのほぼ全ての細胞にウイルスを感染させることに成功した。当初計画では、ウイルス感染後にHeLa細胞ライブラリーの大部分が死滅し、生残細胞(HMPV感染抵抗性細胞)を解析する予定であった。しかし、HMPVは細胞感染時の細胞変性効果が弱く、HMPV感染細胞の大部分が生残しており、HMPV感染に抵抗性を示す細胞を選別することが困難であった。本実験では細胞の生残/死滅以外の指標が必要であり、検討の結果、HMPV感染HeLa細胞はHMPV非感染HeLa細胞と比較して、増殖速度が遅いことが判明した。そこで、HMPV感染HeLa細胞ライブラリーを継代を繰り返して長期間培養することにより、増殖速度の速いHMPV感染抵抗性細胞の割合を高め、HMPVの感染・増殖に必要な宿主因子候補を50程度同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は計画していたHMPVの感染・増殖に必要な宿主因子を50程度同定した。さらに昨年度の結果と合わせ、RSウイルス及びHMPVの感染・増殖に共通して必要な宿主因子を複数個発見した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はこれまでの研究で見出された、RSウイルス及びHMPVの感染・増殖に必要な宿主因子について重点的に研究を行う。具体的にはこれらの宿主因子をノックアウトした細胞を個別に作成し、ウイルスの生活環と各宿主因子の関連を明らかにし、これまで不明であったRSウイルス及びHMPVのより詳細な感染動態を解明する。さらにこれらの宿主因子が他のパラミクソウイルスの感染・増殖に及ぼす影響を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は効率的に研究を進めたため、次年度使用額が生じた。特に次世代シークエンスデータ解析パイプラインの効率化、及び統計学的解析を導入した結果、当初計画よりも少ない実験回数で十分な結果が得られたため、大幅な研究費の節約が可能であった。次年度はこれまでに同定された宿主因子について個別にノックアウト細胞などを作成し、より詳細な解析を行う予定である。
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