研究課題/領域番号 |
17K16290
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
中島 啓介 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (60795269)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | けいれん重積 / ベンゾジアゼピン / GABA-A受容体 |
研究実績の概要 |
小児けいれん重積に対する急性期治療の第一選択はベンゾジアゼピン(BZDs)が使用される。1990年代からBZDsの使用頻度の増加と併行して後遺症を伴う症例の報告が増している。BZDs はGABA-Aレセプターに作用しGABAの作用を強めることで成熟神経細胞では抑制性に、幼若神経細胞では興奮性に働く。このことから臨床的なBZDsの使用と後遺症の発症の関係を示すため、けいれん重積マウスモデルを作成しBZDs の作用を確認すると共に新規治療としてGABA-A レセプターの抑制 性を増強する作用を持つブメタニド(NKCC1 blocker)とBZDs の併用投与の有用性を示す。 これまでの知見から我々のけいれん重積モデルに関してNKCC1/KCC2 バランスの変化が後遺症の出現に関わっている可能性が示唆されていると言うこと、およびブメタニドとBZPs の併用で後遺症が改善すると言う点は興味深い結果であると考え、その内容をまとめた論文を投稿中である。さらにその結果をより後押しするため、けいれん重積モデルマウスの海馬蛋白でのNKCC1/KCC2の発現定量を目的としてウエスタンブロッティングを施行するとともに、染色の再現性について再評価を行っている。また、後遺症としてけいれん重積モデルにBZDsを投与後に増悪を示すような行動実験、および染色の異常を探すため追加実験を施行した。 現在、東京医科歯科大学小児科関連病院において小児けいれん重積患者の臨床データを集積し、急性期の治療と後遺症の関係について前向きの臨床研究を行うためのシステムを完成させ稼働し、東京医科歯科大学の倫理委員会の承認のもとデータ集積を開始した。それに先駆けて、少数例でけいれん重積の際の急性期治療方法が後遺症に影響を及ぼすか否かを解析し、学会発表を行った後、論文化の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究に関しては、基本的な手技(染色、切片作成、灌流固定)については研究補助員に依頼し行っている。定期的に研究協力者である上司と連絡をとり、最も大切なけいれん重積モデルマウスの作成については自ら行っている。 臨床研究についても、多施設でのデータ集積システムが稼働したとともに、単施設での症例を集積したデータを用いて急性期治療と後遺症の関係についての基礎解析を施行し、論文化の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿中の基礎研究論文、および作成中の臨床研究論文を仕上げることにより、広く自らの研究の目的や有用性を認識してもらうことが、臨床データ集積の助けになる。 基礎研究データ集積についてはよりデータの裏付けを強固にするため、継続する必要があり、様々な方法(行動実験、生理検査、染色など)で動物モデルの臨床で発生している状況との相似性を証明していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
基本的な実験について研究補助員に依頼するための人件費として使用するとともに、今年度論文を2本投稿中のために必要な費用に充てる。
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