小児けいれん重積に対する急性期治療の第一選択であるベンゾジアゼピンが使用されるが,その標準的な治療であるベンゾジアゼピン治療のの問題点を指摘するとともに,新規治療としてGABA-Aレセプターの抑制性を増強する作用をもつブメタニドとベンゾジアゼピンとの併用使用の有効性について調べた. 以前論文を査読した際に指摘されたNKCC1/KCC2比の評価方法の標準化についてはWestern Blotting による蛋白量の比を用いた.結果は2017年のてんかん学会で発表するとともに現在論文投稿中である(Epilepsy and Behavior). 我々のけいれん重積モデルではベンゾジアゼピン使用時に悪化を認めた結果はなかったものの,恐怖記憶において我々のけいれん重積モデルにおいて異常を認めていたものがベンゾジアゼピン投与後に改善を認めなかったが,ベンゾジアゼピンとブメタニドの併用にて改善をした.また,われわれのけいれん重積モデルにおいて,NKCC1/KCC2の変化が後遺症の出現に関わっている可能性が示唆された. それ以外の研究成果としては小児けいれん重積に関するデータベースを構築し,軽症例へのGABA-Aレセプター抑制系の抗けいれん薬の過量投与が後遺症の重症化につながっていることを確認し2019年小児神経学会にて発表した. 近年,けいれん重積後に意識レベルの低下が遷延しのちに痙攣群発を認めるタイプの急性脳症を集積しエクソーム解析を行った結果,NKCC1/KCC2バランスを制御するSPAKというキナーゼをコードするSTK39遺伝子が原因と考えられるという論文が出ており,小児のけいれん重積の重症化および後遺症発現の原因としてNKCC1/KCC2バランスの変化は大きく注目されている.今後,STK39遺伝子とけいれん重積の後遺症についての解析を行っていくう必要があると思われる.
|