小児の肥満が健康に与える影響について調査するとともに、肥満の指標のカットオフ値に関する妥当性を、日米の大規模データベースを利用して検討した。日本のデータは、DPCデータベースを用いて研究した。アメリカにおいては、NHANES 、KID (kids inpatient database)、およびNIS (national inpatient sample)などを使用して研究を行った。 まず、小児の肥満が、小児のコモンな入院疾患に与える影響を検討した。具体的には、日本のデータにおいては、RSウイルス細気管支炎、インフルエンザ感染症、マイコプラズマ肺炎、気管支喘息発作について検討した。いずれの疾患においても、小児肥満は入院日数の延長、重症化のリスク、再入院のリスクの傾向があった。一方で、小児のやせ(るいそう)も同様かそれ以上の危険因子であることが分かった。 米国のデータにおいても、小児肥満は喘息発作、下気道感染症、尿路感染症において、重症化の危険因子であった。さらに、米国の肥満は日本人の小児より深刻である点、および貧困との密接な関連があるためか、重症化の効果はより大きく計測された。 最後に、アメリカのデータを用いて、BPA (Bisphenol A)が小児の肥満に与える影響を推定した。過去、小児において、この化学物質が与える影響をみた研究は複数あったが、我々の研究では、この関連性は年代を超えた一貫性がなく、因果関係に関しては不明であった。
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