研究課題/領域番号 |
17K16295
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 信一 東北大学, 大学病院, 助手 (30770359)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 早産児 / 人工胎盤 / ヒツジ |
研究実績の概要 |
現行の新生児医療は出生直後から人工呼吸管理を開始して,早産児に胎児循環から成人循環への適応を強制している.そのため,妊娠24週未満で生まれた成育限界児は左心不全や動脈管開存に陥りやすく,しばしば脳出血,脳白質損傷,壊死性腸炎を併発する.そこで我々は,ヒト胎盤循環を模したポンプレス人工胎盤システムを,ヒツジ胎仔を用いた動物実験で開発した.このシステムを臨床応用すれば,現行の保育器で育てる新生児医療を人工子宮で育てる新生児医療へと転換させ,成育限界児の後遺症なき生存を可能にするかもしれない. その一方で,感染抵抗力が弱い成育限界期のヒツジ胎仔は人工羊水内で増殖した微生物による菌血症や敗血症に陥りやすいことが指摘された.そこで本研究期間には,微生物の増殖による感染症を予防するために人工羊水の浄化システムを確立する.具体的には,(1) 羊水量を減少させ,(2) 物理的濾過フィルターを強化し,(2) 最も効率のよい濾過流量に設定すれば,成育限界期のヒツジ胎仔であっても,人工羊水内での微生物の増殖や感染症を予防できることを証明する. 平成29年度は人工胎盤システムによる養育において,人工羊水量を減らし (羊水量10L),0.2 マイクロメートルの細菌濾過フィルターと紫外線照射装置を併用した羊水循環浄化装置を使用したが,羊水培養からはグラム陰性桿菌が検出され,敗血症を克服できなかった. 平成30年度には比較的成熟した妊娠135-138日のヒツジ胎仔を用いた.6時間毎に人工羊水の入れ替えを行い,羊水感染症を防ぐことが可能かを検証した.人工羊水中で9日間の養育が可能であった3例において検討を行った.216時間における羊水培養では,2例でEnterococcus faeciumを,1例でCandida albicansを同定した.しかし羊水培養で同定された菌による敗血症の発症はなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工羊水量を減らし (羊水量10L),0.2 マイクロメートルの細菌濾過フィルターと紫外線照射装置を併用した羊水循環浄化装置では,羊水培養からはグラム陰性桿菌が検出され,敗血症を克服できていない.そのため平成30年度には人工羊水の6時間毎の入れ替えを行った.羊水中にグラム陰性桿菌や真菌は検出されたが,それによる敗血症は防ぐことができた.当初予想されていたよりも人工羊水内での微生物の増殖を抑えることに難渋している.
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度には人工羊水の入れ替えや”かけ流し”による安全性の検証が必要と考えられる.また閉鎖式人工子宮バッグの導入も検討課題である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である. 平成31年度請求額と合わせ平成31年度の研究遂行に使用する予定である.
|