極低出生体重児の生命予後向上が著しい一方で、一見順調な発達を示している極低出生体重児の多くが、自閉スペクトラム症や注意欠陥多動障害、学習障害、知的障害などの神経発達障害のために支援を必要としていることが、近年の研究で明らかとなっている。このため、周産期脳障害がどのような脳内基盤に基づいて生じているかを明らかにするべく、就学前の極低出生体重児において、行動モニターによる客観的行動分析、脳機能測定を用いた生理学的手法を用いて、脳内基盤を数値化しようと研究を開始した。 平成29、30年度において、それぞれ15名、13名の極低出生体重児を対象に解析を行った。平成30年度の被験者の月齢は68.6±4.6か月、男女比12:1、平均在胎週数27.9±2.7週、出生体重1067±343gであった。K-ABCによる認知処理、習得度指数は88(48-111)、90(73-108)であった。脳磁図で、ヒトの声「ね」の抑揚の変化に対する脳反応(MMF)を解析したところ、左側Supramarginal領域の反応の強さと言語能力に正の相関を認めた。また平成29、30年度を含めた極低出生体重児27例と定型発達群31例、自閉スペクトラム症群31例と純音に対する脳反応(P1m)を比較検討した。左半球のP1m潜時において、極低出生体重児群の反応が定型発達群に比し有意に早い結果であった。低出生体重児においては、腎ネフロンのHyperfiltration理論と同様に神経細胞においても、減少した神経細胞の成熟促進が生じている可能性があることが想定された。来年度もサンプル数を増やし、検討する。
|