水疱性類天疱瘡(BP)は高齢者に好発し、表皮基底細胞の17型コラーゲン(COL17)を標的とする自己免疫性水疱症で、臨床的に水疱やそう痒を伴う浮腫性紅斑が特徴的である。IgGクラス抗COL17自己抗体が水疱形成を誘導することは証明されているが、浮腫性紅斑の形成機序は未だ十分に明らかではない。しかしBPでは、IgEクラス抗COL17自己抗体(BP-IgE)も生じることがあり、紅斑形成へ関与していると予想されている。本研究の目的は、BP-IgE自己抗体によって紅斑形成に至る機序を解明すること、また紅斑形成機序を明らかにすることでBP-IgEを介した炎症増幅機構がBPの新規治療標的となり得るかを検証することである。一部のBP患者病変部皮膚にて真皮内にもCOL17の細胞外領域を認めることや、疾患活動期のBP患者末梢血中にて好塩基球上のCD203cの発現亢進を認めることから、BP患者皮膚ではCOL17がプラスミンなどのプロテアーゼによって切断されていることが示唆されるが、BP自己抗体のエピトープ決定に際してCOL17のプロテアーゼ部位の同定が重要と考えられる。本研究においてCOL17リコンビナントタンパクをプラスミンにて切断処理して得られる120kDa断片と97kDa断片を質量解析に提出し、COL17のプラスミンによる切断部位の同定を試みた。質量解析の結果、いずれの断片においてもCOL17の細胞外領域に位置するNC16AのN末端側アミノ酸配列で切断されることが明らかとなった。
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