研究実績の概要 |
まず、Muse細胞から分化誘導した色素細胞が再構成皮膚内でもメラニンを産生し、それを角化細胞へと移譲できるかどうかを検討した。私は、これまでの検討で、Muse細胞より色素細胞、角化細胞、線維芽細胞が分化誘導可能であることを確認している。これらの細胞を用いて3次元再構成皮膚を作成した。作成後に3次元再構成皮膚を目視で確認したところ、黒色の斑点が観察できた。これはヒト色素細胞を含んだ再構成皮膚と比較しても、同程度の色素であった。また、Muse細胞由来色素細胞を含む再構成皮膚を薄切し、免疫蛍光染色で色素細胞関連タンパク質を染色した結果、表皮基底層にてtyrosinase陽性細胞が確認できた。また、Gp100で蛍光免疫染色したところ、melanosomeが色素細胞外にて陽性箇所が存在することが分かった。すなわち、Muse細胞由来色素細胞は細胞外へmelanosomeを放出していることが分かった。 また、Muse細胞を遊走させる因子についても検討を行った。我々の研究で、3次元再構成皮膚の真皮へMuse細胞またはMuse細胞由来色素細胞を移入しても、これらの細胞は表皮基底層へ移動し、基底層に定住することが分かっている(Tsuchiyama et al., JID, 2013, 133, 2425-2435)。そこで、今回我々は、Muse細胞を誘導させるタンパク質またはケモカインを特定するための実験を行った。分化誘導前のMuse細胞を用いて、boyden chamber assay法により検討を行った。タンパク質はWnt3aとケモカイン(SDF-1α、RANTESなど)8種類を用いて行った。その結果、Muse細胞はSDF-1αとRANTESにて有意に細胞遊走が確認された。この結果から、Muse細胞はケモカインにより遊走されることが分かった。
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