2018年度は、プロレニン受容体(PRR)がV-ATPaseのサブユニットとして機能している点に着目して、色素産生細胞におけるPRRの機能の解析を行った。特に、V-ATPaseは、オートファジーの制御に関係していることから、オートファジーにおけるPRRの機能を解析した。 まず、色素産生細胞におけるオートファジーの機能を明らかにするため、メラノーマ由来培養細胞株であるHMVIIと網膜色素上皮細胞由来培養細胞株であるARPE-19に、オートファジー阻害剤を添加して、その影響を検討した。すると、HMVIIとARPE-19いずれも細胞増殖が抑制され、HMVIIでは細胞遊走能が低下した。また、ウエスタンブロット法でオートファジー関連タンパクであるLC3とp62の検出を行ったところ、LC3-IIとp62が細胞内に蓄積しており、オートファジーが抑制されている結果が得られた。次に、siRNAを用いてPRRの発現を抑制し、その影響を検討した。すると、オートファジー阻害剤を添加した時と同様に、細胞増殖と細胞遊走能の低下、細胞内へのLC3-IIとp62の蓄積を観察することができた。これは、PRRが色素産生細胞においてオートファジーの制御を介して、色素産生細胞の生理機能を調節している可能性を示唆している。昨年、PRRがMITFの発現を制御しているデータが得られたが、2019年にMITFがメラノーにおいてオートファジーの制御に関与していることが報告されていることから(Moller K et al.Sci Rep. 2019)、PRRがMITFの発現制御を介してオートファジーを制御している可能性も考えられる。
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