研究課題
強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化と血管障害を特徴とする全身性の自己免疫疾患であり、血管障害などを背景に難治性潰瘍を形成することが臨床的特徴の一つとして挙げられる。強皮症の病因はいまだ不明だが、研究代表者はこれまで「転写因子Fli1の恒常的な発現低下」が強皮症の血管障害、線維化、免疫異常の病態に関与している可能性を明らかにしてきた。その研究の過程で、強皮症病変部皮膚に浸潤している骨髄由来細胞においてもFli1の発現が低下していることを見出し、骨髄由来細胞におけるFli1の発現低下が新生血管形成の障害を背景に強皮症に類似した血管障害を再現することを明らかにした。本研究の目的は、骨髄由来細胞におけるFli1の発現低下が引き起こす新生血管形成の障害が創傷治癒過程に及ぼす影響について検討を行い、強皮症の難治性潰瘍形成の病態に骨髄由来細胞の異常が関与している可能性を明らかにすることである。そのため、今回骨髄由来細胞特異的Fli1欠失マウスを用いて創傷治癒を評価した。まず、野生型マウスと比較して骨髄由来細胞特異的Fli1欠失マウスでは創傷治癒までに日数を要することが明らかになった(18.0±2.53日 vs 15.0±1.25日)。さらに、総面積においては7日目以降有意差を持って骨髄由来細胞特異的Fli1欠失マウスにて総面積が大きかった。以上のように、骨髄由来細胞におけるFli1の恒常的発現低下は創傷治癒の遅延をもたらすことが明らかになり、全身性強皮症における難治性潰瘍の病態に骨髄由来細胞における転写因子Fli1の恒常的発言低下が関与している可能性が示唆された。
3: やや遅れている
平成29年度は骨髄由来細胞特異的Fli1欠損マウスを用いて、骨髄由来細胞における転写因子Fli1の恒常的発現低下が創傷治癒に影響を及ぼすことを明らかにした。今後はそのメカニズムについての検討を行う。
今後は創作成後5日後および7日後に創縁より採取した皮膚検体をを用いてReal-time PCRによるサイトカイン、細胞成長因子のmRNA発現の定量的解析、CD31染色およびa-SMA染色を行い、創縁に新生する毛細血管数ならびに血管壁細胞におけるa-SMAの発現量を評価する。次に、上皮化後の局所皮膚の皮膚血管の構造および機能をFITC抱合デキストラン、Evans Blue Dyeを用いて検討する。そして、Fli1McKOマウスにみられる創傷治癒遅延が骨髄由来細胞における転写因子Fli1の発現を亢進させる薬剤であるボセンタンにより改善するかどうかの検討を行う。
計画にやや遅れが生じており、そのため使用額が少なくなっている。
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