好塩基球に依存する慢性皮膚炎症である、痒疹モデルマウスおよびVitD3塗布による慢性皮膚炎・アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて、アンフィレグリンの炎症惹起能の解析を行った。アンフィレグリンをsiRNAを用いて抑制すると、両モデルマウスともに炎症は抑制された。病理組織学的には、表皮肥厚の改善に加えて、真皮における細胞浸潤が改善していた。これらから、アンフィレグリンが炎症に関わっていることが示された。 次に、リコンビナントアンフィレグリンを両モデルマウスに投与したところ、炎症は増悪した。しかしながら、マウスの健常皮膚に投与しても、炎症は惹起されなかった。このことから、アンフィレグリンは炎症の惹起因子ではなく、増悪因子(amplifier)として機能していることが考えられた。 両モデルマウスでは好塩基球が病態に深く関わっているが、組織学的検索により、好塩基球がアンフィレグリンを発現していることが確認された。好塩基球のアンフィレグリン産生能をマウス骨髄由来好塩基球を用いてin vivoで確認したところ、IL-3で誘導した好塩基球はIgE刺激によく反応し、TSLPにより誘導された好塩基球はIgEに加えてIL-33の刺激によりアンフィレグリンmRNAの発現を増強させた。さらに好塩基球由来のアンフィレグリンがどの程度炎症に影響を与えているかを、好塩基球移入実験で確認した。ジフテリアトキシンにより好塩基球が除去されるマウスでは、両モデルマウスの炎症は減弱する。ここに、野生型マウスの好塩基球をアンフィレグリンsiRNA処理をして移入した。スクランブルsiRNA処理好塩基球を移入すると炎症は回復したが、アンフィレグリンsiRNA処理好塩基球を移入しても炎症は回復しなかった。 以上より、好塩基球に依存する皮膚慢性炎症では、好塩基球由来アンフィレグリンが炎症を増幅している可能性が考えられた。
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