研究課題/領域番号 |
17K16329
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
藤本 篤 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (10571937)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ケラチン71 / 縮毛症 / 毛包分化 |
研究実績の概要 |
先天性毛髪疾患である常染色体優性遺伝性縮毛症および乏毛症の原因はKeratin71 (KRT71)遺伝子の変異であることが分かっている。しかしながら、Keratin71の毛包分化における正確な役割や変異によって縮毛症を発症する病態については未だ明らかでない。 本研究は、縮毛症を呈するマウスから得たkaratin71 (Krt71) の新規変異(c.1117_1123del7ins10 (p.L373_T375delinsSLLS))について、変異によって毛包の形態、機能がどのように変化するかを詳細に解析する。また、毛包内毛根鞘に発現している様々な転写因子について、培養細胞を用いてKRT71遺伝子のプロモーター解析を行い、遺伝子の発現調節機構を明らかにすることを目的とする。 平成29年度は、Krt71遺伝子の上記変異をクローニングし、発現ベクター (pCXN2) を用いてHaCaT (human keratinocyte) 細胞およびPtk2 (kangaroo rat kidney epithelial) 細胞に導入し発現させた。現在それぞれの細胞を蛍光二重染色法で解析中である。具体的には、変異型のkeratin71が、それぞれの細胞の内在性のタイプIケラチンである keratin 14、keratin18とのヘテロ二量体形成不全に陥っていることが予想される。 結果をふまえ、先行研究により得られた知見、すなわち走査型電子顕微鏡での詳細な形態学的観察および免疫組織化学染色法での毛包におけるkeratin71の発現パターンの解析結果との分子生物学的な関連を考察する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画では、変異型のkeratin71がケラチン中間径フィラメントの形成に及ぼす影響について、培養細胞を用いた蛍光二重染色法で解析結果を得る予定であった。しかしながら、変異のクローニング、発現ベクター (pCXN2) を用いたHaCaT (human keratinocyte) 細胞およびPtk2 (kangaroo rat kidney epithelial) 細胞への導入に時間を要したため、変異型のkeratin71が、それぞれの細胞の内在性のタイプIケラチンである keratin 14、keratin18とのヘテロ二量体形成に与える影響については解析できていない。この点から計画より遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、Krt71遺伝子の上記変異をど導入したHaCaT (human keratinocyte) 細胞およびPtk2 (kangaroo rat kidney epithelial) 細胞を蛍光二重染色法で解析する。申請者らはすでにヒトのKRT71遺伝子変異における同様の実験を行なっており、上記培養細胞の内在性のケラチンを蛍光染色するための抗体およびその条件を有している。マウスkeratin71タンパクの蛍光染色のための最適な抗体についても先行研究があり、それらを参考に研究を進める予定である。同時に、ヒトのKRT71遺伝子のプロモーター領域をpGL4.12ベクターにクローニングする。また毛包内毛根鞘に発現している様々な転写因子をpCXN2ベクターにクローニングする。それらをHEK293T (human embryonic kidney) 細胞、HeLa (human cervical cell carcinoma) 細胞などの培養細胞に導入し、KRT71遺伝子のプロモーター活性を解析する。KRT71遺伝子のプロモーター活性を有意に上昇させる転写因子が見つかった場合は、その転写因子についてクロマチン免疫沈降を行って、KRT71遺伝子のプロモーター領域に転写因子結合部位が存在をすることを示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、平成29年度中に変異型のkeratin71がケラチン中間径フィラメントの形成に及ぼす影響について、培養細胞を用いた蛍光二重染色法で解析結果を得る予定であった。しかしながら、変異のクローニング、発現ベクター (pCXN2) を用いたHaCaT (human keratinocyte) 細胞およびPtk2 (kangaroo rat kidney epithelial) 細胞への導入完了が当初予定していたよりも大幅に遅延した。このため、平成29年度中に購入、使用を予定していた細胞培養試薬や蛍光染色に使用する抗体などの試薬購入を翌年度に繰り越すことになった。 平成30年度は、Krt71遺伝子の上記変異を導入したHaCaT (human keratinocyte) 細胞およびPtk2 (kangaroo rat kidney epithelial) 細胞を蛍光二重染色法で解析する。申請者らはすでにヒトのKRT71遺伝子変異における同様の実験を行なっており、上記培養細胞の内在性のケラチンについては蛍光染色するための抗体およびその条件を有している。マウスkeratin71タンパクの蛍光染色のための最適な抗体についても先行研究論文に情報があり、それらを参考に研究を進め、平成30年度中に遅延を修正する予定である。
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