先天性毛髪疾患である常染色体優性遺伝性縮毛症および乏毛症の原因はKeratin71 (KRT71) 遺伝子の変異であることが分かっている。しかしながら、Keratin71の毛包分化における正確な役割は解明されておらず、変異によって縮毛症を発症する病態についても未だ明らかでない。 本研究は、縮毛症を呈するマウスから得たkaratin71 (Krt71) の新規変異(c.1117_1123del7ins10 (p.L373_T375delinsSLLS))について、変異によって毛包の形態、機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。まず、変異型ケラチン71がケラチン中間径フィラメント(KIF)の形成に及ぼす影響について、培養細胞に変異型ケラチン71を発現させて解析した。変異型Krt71遺伝子をHaCaT (human keratinocyte) 細胞およびPtk2 (kangaroo rat kidney epithelial) 細胞に導入し、蛍光二重染色法で形態学的に評価した。 結果、変異型Krt71を導入した培養細胞においてはKIFが形成されず、核周囲に凝集して観察された。つまり、変異型keratin71は、HaCaTの細胞の内在性のタイプIケラチンであるkeratin 14とのヘテロ二量体を形成する際に何らかの影響を及ぼすものと考えられた。本結果より、Krt71変異により毛包上皮細胞を形成するケラチノサイトの形態学的異常が生じることが縮毛症発症において重要であることが示唆された。
|