研究課題
ケラチノサイトは皮膚組織を構築する組織幹細胞であり、自己複製しつつ角化細胞へ分化する幹細胞特性を備える。この幹細胞特性制御の異常が原因で、ケラチノサイトは無秩序に増殖する癌細胞へと変貌する。申請者は核膜孔複合体因子ヌクレオポリン(NUP153)がケラチノサイトの自己複製を制御する分子であり、扁平上皮癌の病態と関連することを初めて見出した。しかし、NUP153による自己複製制御の分子機構については不明である。本研究は、ケラチノサイトならびに扁平上皮癌細胞の自己複製を制御するNUP153の作用機序を解明する。平成29年度は、遺伝子導入法によりNUP153の発現量が異なる細胞を樹立し、ケラチノサイトならびに扁平上皮癌細胞の幹細胞特性(自己複製能力、未分化維持)とNUP153の発現量の関係について細胞レベルで解析した。まず、shRNAによるNUP153遺伝子干渉する手法を確立し、これらを導入した細胞における網羅的遺伝子発現解析(マイクロアレイ)を行った。これにより、自己複製に関与する複数の候補遺伝子を同定した。また、皮膚組織におけるNUP153の発現プロファイルについて、共焦点蛍光顕微鏡で解析を進めている。平成30年度は、候補遺伝子の発現制御メカニズムの解明に向けて、NUP153を標的としたクロマチン免疫沈降‐シークエンス(ChIP-Seq)を行う予定であり、現在は条件検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の目標は遺伝子導入法によりNUP153の発現量が異なる細胞および遺伝子改変マウスを作成し、ケラチノサイトの幹細胞特性(自己複製能力、未分化維持)とNUP153の発現量の関係について細胞レベル・組織レベルで解析することであり、概ね達成できたため。
平成30年度は、候補遺伝子の発現制御メカニズムの解明に向けて、NUP153を標的としたクロマチン免疫沈降‐シークエンス(ChIP-Seq)を行う。自己複製に関わる候補遺伝子の現在は条件検討をプロモータ領域との相互作用や、これに関わる共役因子を同定する予定である。
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