本研究では、食物依存性運動誘発アナフィラキシーに対し、症状誘発を抑制する治療法の確立およびその機序の解明を目指すものである。昨年度申請者は、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーが疑われる患者に負荷試験を行い、症状誘発の有無を確認した。症状が誘発された場合には、後日同じ条件で負荷開始1時間前にミソプロストールの前投与を行い、症状が抑制できるかどうかを観察した。食物依存性運動誘発アナフィラキシーは通常の食物アレルギーとは異なり、患者の体調、運動、NSAID内服の有無により症状誘発の閾値が低下するため予測が困難である。日常的に摂取する食材の場合は、完全な除去が難しい。症状誘発を抑制できる薬剤が判明すれば、患者のQOL向上につながるものと考える。また、症状誘発および抑制の機序が解明されれば、新たな治療法の開発にもつながる。 昨年度から引き続き、小麦以外の食材も含めて食物依存性運動誘発アナフィラキシーが疑われる患者に、入院下で負荷試験を行い対象患者の集積をおこなった。摂取、運動、アスピリン内服(500mg)の負荷でそれぞれ単独で症状を認めないことを確認した後、摂取+運動、アスピリン+摂取、アスピリン+摂取+運動の負荷を行い、症状が誘発された時点で陽性と判定した。これまでに32例に負荷試験を行い、そのうち29例が陽性であった。29例のうち、同意が得られた23例にミソプロストールの前投与を行ったところ、20例は症状誘発を抑制できた。また、症状を認めた3例も軽微な症状であった。全例外食時などで原因食物を摂取するかもしれない場合には、ミソプロストール前投与により事なきを得ている。
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