研究課題/領域番号 |
17K16343
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
石元 達士 高知大学, 医学部附属病院, 医員 (40750039)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 皮膚炎 / 表皮角化細胞 / 増殖 / 分化 |
研究実績の概要 |
①誘導型コンディショナルKOマウスを用いた検討:出生時にAhedが欠損しているマウス(K5.Cre_Ahedflox, AhedcKO)は表皮および毛包の増殖・分化に異常をきたし生後数日で死亡した。さらに、このマウスの皮膚からは初代培養角化細胞が調製できなかった。これらのことから、更なる研究の推進に困難を生じたため、米国ジャクソン・ラボよりK5.CreERT2マウスを導入し、Ahedfloxマウスと交配することによりタモキシフェン誘導型表皮特異的KOマウス(IndEcKO)を作出した。活性型タモキシフェンである4-hydoxy Tamoxifen (4-OHT)をエタノールに溶解して、これを背部皮膚に外用し、皮膚に生じる変化を検討した。Tamoxifen濃度は高容量のものと低用量のものとを調整し、条件を変えて検討を行った。 ②Ahed関連タンパク質の同定:Ahed関連タンパク質を同定するため細胞内で相互作用するタンパク質を免疫沈降法で単離し、質量分析を行い同定する。その準備としてFLAG-Ahedを安定的に発現するHela細胞およびHaCaT細胞を樹立した。 ③抗Ahed抗体の作成:各種実験に使用できる抗Ahed抗体が無いため、外部受託業者にて抗ペプチド抗体を作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①誘導型コンディショナルKOマウスを用いた検討:K5.Cre_ERT2マウスを米国ジャクソン・ラボより導入しAhedfloxマウスと交配することによりタモキシフェン誘導型表皮特異的KOマウス(IndEcKO)を作出し、研究に使用するマウスを安定的に供給できる環境を構築した。IndEcKOマウスの背部皮膚に濃度の異なるタモキシフェンを外用して、その後皮膚に生じる変化を観察した。高容量(10 mg/ml)を外用したマウスでは表皮が菲薄化し、毛包の角化細胞の変性と壊死を認めた。一方、低容量(0.2 mg/ml)を外用したマウスでは、過角化と表皮肥厚、さらに真皮内への炎症細胞浸潤の増加をみとめた。この変化は高容量と比較して、より少数の分裂可能な角化細胞数が変性・壊死するため、代償性の反応性として湿疹様の変化を生じたものと推測した。また、IndEcKO新生仔マウスの皮膚から表皮角化細胞の初代培養を行い、これを4-OHT処理したところ、溶媒で処理したコントロール群と比較して、4-OHT処理群ではコロニー形成能が有意に抑制された。以上の結果から、Ahedは表皮角化細胞や毛包上皮細胞などを維持し、増殖させるために重要な役割をもつことが示唆された。 ②Ahed関連タンパク質の同定について:抗Ahed抗体の作製を外部受託業者に依頼した。今後はFLAG-Ahed安定発現細胞を用いて抗FLAG抗体あるいは抗Ahed抗体によりAhedならびにAhed結合タンパク質を免疫沈降法により調製し、質量分析装置を用いてAhed結合タンパクの同定を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①昨年度の研究から、表皮の生理的な維持にAhedが重要な役割を担っている事が示された。毛周期に対するAhed欠損の影響は検討が不十分であるため、様々な週齢のマウスにタモキシフェンを作用させて検討を行う。本年度は更に病的な条件で表皮角化細胞内Ahedが果たす役割を明らかにする。タモキシフェンの外用後にテープストリッピングにより表皮を欠損させる、あるいは生検用トレパンを用いて皮膚全層を欠損させた後の修復過程を観察する。 ②マウス表皮角化細胞初代培養を用いた検討では、Ahedの欠損により細胞増殖に障害を生じる基礎的な知見が得られた。この細胞増殖異常がどのように生じているのか詳細に検討する。その一端として次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を試みる。さらにCRISPR/Cas9を用いてHaCaTあるいはHela細胞などのヒト株細胞内でAhedをknockoutして、マウス表皮角化細胞と同様の障害が生じるの検討する。 ③Ahed関連分子の単離のための研究材料であるAhed安定発現細胞とAhed特異抗体は作製できた。これらを用いて免疫沈降条件を適正化して、Ahed関連タンパク質の単離・同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)計画よりプラスチック消耗品が安価に購入できたため。 (計画)細胞培養試薬、分子生物学生化学実験試薬の購入にあてる。
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