研究課題
昨年度までに行ってきた研究成果を論文化し、「Journal of Investigative Dermatology」へ投稿。Letter to the Editorとしてアクセプトされた。論文の概要を以下に示す。Flaky tail mice (FTM)は、角層pHの恒常性維持機能に障害があり、そのことが皮膚炎発症に関与している。このFTMは加齢とともにアトピー性皮膚炎(AD)様の皮膚炎を自然発症するが、発症する部位に特異性がある。具体的に顔面・頚部には角層pHの上昇を伴う強い皮膚炎を生じるが、背部では皮膚炎を生じない。この部位特異性の機序を探索すべくマイクロアレイ解析を実施した。まずFTMの頚部皮膚(皮膚炎あり)と背部皮膚(皮膚炎なし)からサンプリングし、全遺伝子のヒートマップ作成、解析を行った。しかしながら個体差が大きく、部位特異的な差異は明確とはならなかった。次にADに関連する遺伝子をピックアップし解析したところ、皮膚炎を発症している頚部においてFlgが上方制御され、一方でFlg2が下方制御されていた。この両遺伝子の発現パターンは、過去に必須脂肪酸除去食によって誘発される脂質代謝異常関連皮膚炎で報告されたものと同様であった。さらにKEGGパスウェイ解析においても、脂質代謝異常に関連する病態が上位に検出された。特にperoxisome proliferator-activated receptor(PPAR)シグナル経路において、多くの遺伝子における発現低下が確認された。研究代表者は、過去にもPPARがADの病態に深く関与し、かつ、同経路が皮膚炎の治療標的になり得ることを報告している。FTMの皮膚炎部位特異性に脂質代謝異常、PPARシグナルの異常が関与している可能性が示唆された。本研究課題の最終目的は、皮膚炎の発症予測、予防法の開発であるが、研究代表者の海外留学に伴い、本研究課題は一時中断するに至った。研究再開後は、これまでの解析で得た知見をもとに、皮膚炎の予防により焦点をあてて課題を進める予定である。
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Journal of Investigative Dermatology
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https://doi.org/10.1016/j.jid.2019.04.024