研究実績の概要 |
皮膚感染症の原因としてはグラム陽性菌の割合が多いが、近年大腸菌などのグラム陰性菌の難治性皮膚感染も多く報告されている。LMIR3欠損マウスのLPSに対する反応が更新していること(Shiba E, Izawa K,et al., J Biol Chem, 2017)が実際の菌の排除にどう関与しているかを明らかにするために、皮膚への大腸菌投与を行った。腹腔の感染モデル同様に、LMIR3欠損マウスは早期に皮下への好中球の遊走が亢進し、菌の排除に成功することを明らかにした。難治性グラム陰性菌感染においてLMIR3とリガンドであるセラミドの結合を阻害する薬剤が有効であると考えられた。また、ヒト好中球やヒトマスト細胞においてもマウス同様にLMIR3が発現しており、セラミドなどのリガンド存在下ではLMIR3が活性化し、ケモカインなどの産生が抑制されることを明かにした(Maehara, Kaitani, Izawa, et al., J Invest Dermatol, 2018)。 また、TLR2のリガンドであるzymosanの皮膚投与モデルを行った。活性化型受容体LMIR5/CD300b欠損マウスは真菌成分であるzymosanに対する好中球の集積が著しく低下する。このメカニズムとして、炎症性樹状細胞の免疫受容体CD300bが真菌に含まれる脂質成分フィトスフィンゴシンを認識し、NO(一酸化窒素)を産生して好中球を局所に集積させて炎症が促進されることを明かにした。真菌感染時には早期の好中球集積は真菌排除に役立つが、一方、感染収束後の過剰な好中球集積は炎症を悪化・遷延化させて組織障害を引き起こすなどの慢性炎症につながることを明かにした(Takahashi, Izawa, et al., Science Signaling, 2019)に発表した。
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