• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

乾癬の難治性かゆみと病態の両方を寛解させる新規治療法に向けた分子基盤の確立

研究課題

研究課題/領域番号 17K16353
研究機関順天堂大学

研究代表者

古宮 栄利子  順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90647009)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードCD26 / DPPIV / 乾癬 / かゆみ
研究実績の概要

CD26はT細胞共刺激分子であると同時にDPPIVジペプチダーゼ活性を有する多機能タンパク質である。血清中にも可溶性CD26 が存在し、免疫系および生理活性物質の調節を行っている。更に乾癬の病変部位においても高発現しており、乾癬病態への関与が示唆されている。以上より、乾癬のかゆみにおけるCD26/DPPIVの役割の解明を目的として以下の研究を行った。
血清を用いて、可溶性CD26およびDPPIV酵素活性レベルを比較したところ、尋常性乾癬症例は健常者と比べ、有意に上昇が観察された。そこでCD26 Tgマウスにおいてイミキモドクリームを反復塗布して乾癬モデルマウス(IMQモデル)を作製したところ、野生型のIMQモデルマウスと比較して掻き行動の有意な増加が認められた。以上によりCD26の発現上昇は、乾癬においてかゆみを増悪することが示唆された。
次に、そのメカニズムの一つとしてかゆみを伝達する神経ペプチドであるsubstance P(SP)に着目した。11アミノ酸からなるSPは、DPPIV酵素によりSP(5-11)へと2回切断される。乾癬の血清におけるSPの切断状態を評価したところ、SP(5-11)を検出できるELISAでのみ、乾癬患者で有意に発現が上昇していた。以上から乾癬においてはDPPIVにより切断されたSP(5-11)の発現が上昇していると考えられる。更に、SPの皮内投与モデルマウスにおいて、SP(5-11)は完全長SPよりも有意に掻き行動を誘発し、SPのかゆみはDPPIV阻害薬によって顕著に抑制された。また、DPPIV酵素阻害薬はIMQモデルにおいても顕著に掻き行動を抑制した。
以上から、CD26/DPPIVは、乾癬においてかゆみを増強していることが示された。そのメカニズムとして、DPPIV酵素活性がかゆみ伝達因子SPを切断してかゆみを調節しているためと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、申請者はCD26/DPPIVが乾癬のかゆみを増悪していることを発見し、そのメカニズムがかゆみ伝達因子SPの分解調節を介していることを明らかにした。更にDPPIV酵素阻害薬が乾癬のかゆみに作用する可能性についても明らかにし、国際かゆみ学会にて発表し、論文雑誌に掲載された。

今後の研究の推進方策

上記にあるように、申請者はCD26/DPPIVが乾癬のかゆみを増悪していることを発見し、そのメカニズムがかゆみ伝達因子SPの分解調節を介していることを明らかにした。一方当初の予備実験では、CD26Tgマウスを用いて作製した乾癬モデルは、野生型における乾癬モデルと比較して、皮膚の鱗屑、肥厚、紅斑といった乾癬病態の増悪が観察されていた。しかし残念ながらこの結果の再現性がとれず、CD26は乾癬において、かゆみ調節には関わっているものの、病態の増悪には直接関与していない可能性が高まっている。そこで今後は、CD26と他の神経ペプチドの相互作用について着目し、新たなかゆみ調節メカニズムを解明すると共に、乾癬の病態に寄与するCD26関連因子・非関連因子についても解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

年間の助成金使用額が予定よりも低く抑えられたのは、当初の計画よりも乾癬病態モデルの条件検討が短期間で済んだため、イミキモドクリームおよび実験動物にかかった資金が予定よりも少なくて済んだと考えられる。一方で、前述したとおり、CD26が乾癬の病態を顕著に増悪したとの結果は、現在のところ再現性が得られていない。そこで今年度からは、CD26分子の乾癬の病態に対する間接的な効果を調べ、新たな抗乾癬薬に向けた研究を行うとともに、かゆみの実験を更に発展させ、SP以外のかゆみ伝達因子(神経ペプチド)との相互作用について研究を行い、新規抗かゆみ薬の創製を図る。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A novel role for CD26/dipeptidyl peptidase IV as a therapeutic target in selected immune disorders and cancers.2018

    • 著者名/発表者名
      Kei Ohnuma, Ryo Hatano, Eriko Komiya, Haruna Otsuka, Takumi Itoh, Noriaki Iwao, Yutaro Kaneko, Taketo Yamada, Hon H. Dang, Chikao Morimoto
    • 雑誌名

      Front Biosci

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] A possible role for CD26/DPPIV enzyme activity in the regulation of psoriatic pruritus.2017

    • 著者名/発表者名
      Eriko Komiya, Ryo Hatano, Haruna Otsuka, Takumi Itoh, Hiroto Yamazaki, Taketo Yamada, Nam H. Dang, Mitsutoshi Tominaga, Yasushi Suga, Utako Kimura, Kenji Takamori, Chikao Morimoto, Kei Ohnuma
    • 雑誌名

      J Dermatol Sci.

      巻: 86 ページ: 212-221

    • DOI

      10.1016/j.jdermsci.2017.03.005.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] The regulation of pruritus in psoriasis and atopic dermatitis-a possible role for CD26/DPPIV2017

    • 著者名/発表者名
      Eriko Komiya, Ryo Hatano, Haruna Otsuka, Takumi Itoh, Hiroto Yamazaki, Yasushi Suga, Utako Kimura, Taketo Yamada, Mitsutoshi Tominaga, Kenji Takamori , Kei Ohnuma, Chikao Morimoto
    • 学会等名
      9th World congress on itch
    • 国際学会
  • [学会発表] CD26/DPPIV regulates mechanical itch in a mechanistically distinct manner from chemical itch.2017

    • 著者名/発表者名
      Eriko Komiya, Ryo Hatano, Haruna Otsuka, Takumi Itoh, Hiroto Yamazaki, Mitsutoshi Tominaga, Kenji Takamori, Kei Ohnuma, Chikao Morimoto
    • 学会等名
      日本研究皮膚科学会 第42回年次学術大会・総会
  • [学会発表] 急性GVHDマウスモデルにおけるHMGB1の動態に関する検討2017

    • 著者名/発表者名
      岩尾憲明、大沼圭、大塚春奈、波多野良、古宮栄利子、伊藤匠、森本幾夫
    • 学会等名
      第40回日本造血細胞移植学会
  • [図書] Advances in Medicine and Biology  The use of the humanized anti-CD26 monoclonal antibody YS110 as a novel targeted therapy for refractory cancers and immune disorders2018

    • 著者名/発表者名
      Ryo Hatano, Kei Ohnuma K, Taketo Yamada, Toshihiro Okamoto, Eriko Komiya, Haruna Otsuka, Takumi Itoh, Hiroto Yamazaki, Noriaki Iwao, Yutaro Kaneko, Nam H. Dang, Chikao Morimoto
    • 総ページ数
      44
    • 出版者
      Nova Science Publishers, Inc.
    • ISBN
      978-1-53613-348-6

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi