研究課題
CD26はT細胞共刺激分子であると同時にDPPIVジペプチダーゼ活性を有する多機能タンパク質であり、乾癬患者血清において高発現している。予備実験では、乾癬のかゆみとともに、病態そのものへの関与が示唆されたことから、申請者はCD26を標的としたかゆみと病態両方に作用する新規治療法の開発を目的に研究を行ってきた。しかしその結果、CD26は乾癬のかゆみ調節には関わっている反面、病態の増悪には直接関与していないことが明らかになった。そこで昨年までにCD26関連因子が乾癬の病態に関与しているかを調べたところ、その1つであるIL-26が乾癬の病態を増悪させることを見出した。今年度は、IL-26モノクローナル抗体(mAb)を作成し、イミキモド塗布による乾癬モデルマウスを用いてIL-26が乾癬の治療ターゲットとなりうるかを明らかにすることを目的に研究を行った。マウスをヒトIL-26リコンビナントタンパクにて免疫し、多くのハイブリドーマから2段階のスクリーニングを経て4種類の抗ヒトIL-26中和mAbを作成した。ヒトIL-26トランスジェニック(Tg)マウスを用いた、イミキモド塗布による乾癬モデルにおいて、4つのIL-26抗体のうちのひとつ、クローン69-10、もしくは4つの抗体の混合物は、IL-26の示す乾癬症状(紅斑・肥厚・鱗屑)の増悪や炎症細胞の浸潤を有意に抑制することが明らかになった。更にそのメカニズムとして、IL-26抗体が、IL-26によって病変組織で促進されるFGF-1,2,7の産生や、血管内皮細胞の増殖・管腔形成促進作用などをコントロールと同レベルまで抑制することを示した。以上より、IL-26は乾癬の病態を抑制しうる治療標的であることが示された。
3: やや遅れている
CD26が乾癬のかゆみの調節作用があった半面、予備実験とは異なり、乾癬病態には大きく影響しないことが明らかになった。そのため、CD26についてのみでなく、CD26関連因子であるIL-26についても、別途に詳細な研究を行う必要があった。
今後は、・IL-26が乾癬のかゆみに対して、どのような影響をもつか・CD26のDPPIV酵素活性により、かゆみを調節するほかの因子がないかどうかについて、更なる解析を行うことで、乾癬の病態とかゆみに対する治療アプローチを確立する。
CD26分子は乾癬のかゆみには関与していたが、予備検討の結果とは異なり乾癬の病態には大きな影響を及ぼさなかった。そのため、CD26関連因子のひとつである、IL-26が乾癬病態に関与していることを解明した。しかしながらその結果、研究対応分子が1つ(CD26分子)から2つ(CD26とIL-26)になったことで、解析に付加的な時間がかかかることとなった。
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