研究課題
毛包の高い再生能を支える毛包表皮幹細胞が、胎仔期に正しい場所、正しい時に誘導される機構については、いまだ十分に理解されていない。発生過程における毛包幹細胞の誘導メカニズムの理解が進まない最大の要因として、胎仔期の表皮前駆細胞の中で「毛包表皮幹細胞」になる細胞を特異的に標識しうるマーカー遺伝子がいまだ同定されていない(または存在しない)ことが挙げられる。そこで私たちは、既存の分子マーカーに依存せず、1細胞解像度での毛包器官発生の長期ライブイメージングと、1細胞トランスクリプトームを統合させたマルチオミクスデータの統合的解析を行うことで、これまで同定不可能であった幹細胞が生み出される過程の連続的かつ網羅的な解析を可能とし、これまで同定不可能であった毛包表皮幹細胞が生み出される過程を連続的かつ網羅的に追跡した。その結果、i) 将来幹細胞になる細胞は毛包プラコードの辺縁の基底細胞層から誘導されること、ii) 初期の毛包幹細胞は成体毛包幹細胞とは異なり、積極的に毛包の形態形成に寄与しないこと、iii) 成体毛包幹細胞の性質は、毛包の形態形成過程を通じて段階的に獲得されていくことなどを明らかにした。また、毛包プラコードには異なる遺伝子発現パターンを有する上皮細胞系譜が同心円上に配置し、このプラコード上の二次元同心円パターンが間葉側へ突出するように陥入、かつ各領域が長軸方向に伸長することで、三次元的な筒状の毛包構造を作るという、新たな毛包発生のモデル -テレスコープモデル-を見出した。本研究成果は現在、論文にまとめ投稿中である。
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https://doi.org/10.1101/2020.04.27.061952