統合失調症の主要な治療法である抗精神病薬の使用が過剰なドパミンシグナル伝達を引き起こす結果、ドパミン過感受性精神病(Dopamine supersensitivity psychosis: DSP)が発症すると考えられている。その過剰なドパミンシグナル伝達を引き起こす要因として、海馬特に腹側海馬支脚の介在ニューロンのドパミン放出制御の障害が関与していると考えている。平成30年度は、平成29年度に作成した高用量抗精神病薬を2週間持続投与し作製した長期高用量抗精神病薬投与ラットを行動実験によってDSPモデルラットとNonDSPモデルラットに振り分けた。また長期高用量抗精神病薬投与ラットとVehicle投与ラットの海馬と摘出し、ウェスタンブロット法によりParvalbumin、GAD47、HSP70の定量解析を行なった。長期高用量抗精神病薬投与ラットの海馬において、Parvalbumin、GAD47はVehicle投与ラット群と比較し有意な差は認めなかったが、HSP70は長期高用量抗精神病薬投与群で有意に上昇していた。長期高用量抗精神病薬を投与し作製したラットでHSP70が上昇したことは、損傷された神経細胞の増加を示唆すると考えられる。本研究の成果を平成31年1月に千葉医学会で報告した。現在学術雑誌への投稿と国際学会への発表準備を行なっている。
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