本研究では、機械学習を用いて精神疾患患者の脳波を解析することにより、病態を適切に特徴付けるバイオマーカーを開発することであった。具体的には、医師の診断結果が紐づいた患者および健常者の脳波を教師データとして機械学習のアルゴリムを適用することにより、被験者と精神疾患患者の脳波の違いを抽出することを目的としていた。本研究ではこれまでに深層学習を用いた解析により、精神疾患の患者の脳波を有意に弁別するシステムを構築することに成功し、さらにはこのシステムを用いて計算される統計量の揺らぎがAt risk mental stateにおいて大きくなることを見出していた。本年度は、機械学習のアルゴリズムに、力学系の理論に基づく非線形時系列解析の手法を取り込むことにより、脳波に止まらず、神経系の多チャンネル時系列を解析することに適した新規な手法を開発した。また、これを用いて患者脳波解析を行った。本成果を元に、今後さらに特徴量の明確化などの研究を進めれば、高精度の診断・治療効果の評価、病態進行の個別予想、脳波を用いたバイオフィードバックなどによる治療法の開発、疾患動物モデルの開発・評価による創薬の効率化、疾患の基礎的な神経生理学的・病理学的な理解などの実現に貢献し得ると考えられる。
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