研究課題/領域番号 |
17K16366
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
里村 嘉弘 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (40582531)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 気分障害 / 脳神経画像 / MRI / NIRS / 大うつ病性障害 / 双極性障害 / 脳神経疾患 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
NIRSとrs-fMRI/構造MRIを組み合わせた診断鑑別法の検討のため、引き続き気分障害患者のリクルートを行い、平成30年度は、NIRS検査についてはうつ病圏患者21名、双極性障害患者7名の測定を加え、そのうち、うつ病圏10名、双極性障害4名についてはrs-fMRI/構造MRIをあわせて施行した。また、うつ病圏から双極性障害への診断変更の予測可能性の検討のため、過去にうつ病圏と診断されすでに画像検査を行った者を対象とした初回評価後1.5年後または3年後の追跡調査を継続した。平成30年度は16名の追跡調査を行い、結果として4名の患者において診断変更がなされた。 さらに、45名の大うつ病性障害感を対象として、初回および1.5年後の2時点における言語流暢性課題中のNIRS信号を用いた解析を行った。結果として、中前頭回領域においては状態像の変化に伴うNIRS信号の経時的な変動を認めなかった一方で、右下前頭回領域においては、うつの重症度の変化に伴って経時的に変動しているという所見が得られ、同領域がうつ症状およびその重症度の形成に重要な役割を担っていることが示唆された。加えて、左上・中側頭回領域の初回測定時のNIRS信号が大きいほど、1.5 年後のうつ症状が軽度であるという結果が得られ、脳機能の評価による予後予測の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大うつ病性障害患者において、状態像の変化またはうつ症状の重症度の変化に伴って脳機能が経時的に変動するという知見は、高精度の鑑別診断法の開発のために、症状の影響を考慮した検討が有効であることを示唆するものであり、本研究の推進につながるものと考えられる。また、NIRS信号により将来の重症度が予測できる可能性が示唆されたことで、MRIのデータを加えた包括的な検討により、症状の遷延や再発についてのより精緻な予後予測マーカーの開発に寄与することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き初回および追跡調査を行いながら、NIRSとrs-fMRI/構造MRIを組み合わせたうつ病圏と双極性障害の診断鑑別、および、予後予測可能性について、平成28年までのデータも加えた解析を進めていく。また、追跡率を高め、より包括的な予後の把握のため、主治医への転帰調査を開始しており、これらのデータを含めた検討を加えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会への参加を見送ったことにより、旅費の実支出額が想定を下回った。次年度は、主に旅費に合算して使用する予定である。
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