NIRSとrs-fMRI/構造MRIを組み合わせた診断鑑別法の検討のため、引き続き研究協力者のリクルートを行い、2019年度は、気分障害患者を含めた29例について新たにNIRS検査を施行し、うち4例については安静時fMRI/構造MRIをあわせて施行した。 2019年度までにNIRSとMRIをともに施行した気分障害患者(大うつ病性障害患者22名と双極性障害患者20名)を対象として判別分析を行ったところ、NIRSおよびMRIを単独で用いた場合と比較して、判別率は上昇(76%)するという結果が得られた。判別のために有効な脳画像指標は、MRIにおいては、右前部島皮質の体積、NIRSにおいては言語流暢性課題中の右背外側前頭前皮質の賦活反応性であった。 また、うつ状態にある大うつ病性障害患者(16名)を対象として、全頭型プローブのNIRS装置を用いて安静時機能結合(resting-state functional connectivity: RSFC)を測定した。結果として、大うつ病性障害患者群では健常群と比較して、認知制御ネットワークの一部と考えられている左前頭前皮質背外側部―頭頂葉間のRSFC低下がより顕著であり、うつ症状の重症度が高いほど同部位のRSFCが低下していた。 これらより、うつ症状の重症度や状態像に違いによる各脳画像指標への影響についてさらに検討を行っていく必要はあるが、簡便で時間解像度の高いNIRSと、空間分解能が高く脳深部を評価できるMRIを相補的に用いることで、気分障害の診断鑑別をより高精度に行うことができる可能性が示唆された。
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