研究課題
統合失調症は、全人口の約0.8%が罹患する頻度の高い精神疾患で、思春期以降に発症し、幻覚・妄想を初め多彩な精神症状を呈する。統合失調症では、急性期を繰り返したり、未治療期間が長いと、現在臨床で行われている薬物治療に抵抗性の難治症状を形成する傾向がある。そのため、急性期を繰り返すことや未治療期間が長いことによって蓄積する分子細胞生物学的な変化が、この難治症状を形成すると仮説を立て研究を進めている。特にそのような蓄積する病態として、神経細胞核内の変化に着目している。具体的にはphencyclidine、MK-801、Methamphetamineの投与による統合失調症モデルラット及びモデルマウスを用いて、核内変化、特にDNAダメージに着目した分子生物学的、細胞生物学的解析を行っている。この結果、これらのモデル動物で、細胞腫や脳部位に応じて、DNAダメージの蓄積の程度が異なり、特定の脳部位で特にDNAダメージが亢進していることを、DNAダメージのマーカー分子による免疫組織化学的解析及び、ウェスタンブロット等により見出した。また、DNAダメージの程度に応じて、遺伝子発現が変化し、統合失調症患者で報告されている遺伝子発現変化とも整合性がとれることを、qPCRにより見出した。さらに上述の特定の脳部位で、特定の細胞腫でDNAダメージが亢進する分子メカニズムに関して、複数の候補遺伝子発現を解析したところ、原因となり得る遺伝子変化をとらえている。
2: おおむね順調に進展している
統合失調症モデル動物を用いて、DNAダメージに着目した分子細胞生物学的な知見が順調に得られている。
統合失調症の病態モデルとなる、遺伝子改変モデルマウスを用いて、さらにDNAダメージ病態をはじめとした難治症状を形成する核内病態を明らかにする予定である。明らかにした病態をもとに、病態モデルマウスのレスキュー実験も進める。また、統合失調症患者でも同様の病態がみられることを解析する。
実験に使う消耗品を節約して使用した結果、予想よりも使用額が少なくなった。
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