抗精神病薬開始後の胃排出能亢進が食欲増加の副作用に関与しているという可能性を研究した。具体的には『体重増加や糖代謝異常を来し易い抗精神病薬の内服⇒食事摂取時の胃排出能亢進⇒食物の小腸への流入速度が早まる⇒食物摂取早期の急な血糖上昇・インクレチンの過分泌⇒インスリンの過分泌』という仮説を想定した。これについて入院中の統合失調症症例に対して、新たな抗精神病薬開始前と開始後1~2週経過した時点の2ポイントで、12時間絶食後の早朝空腹時に胃排出能検査を行った。採取した呼気検体中の13CO2/12CO2比を測定し、呼気13CO2排出曲線のピーク値に達する時間(Tmax)を算出する。それらから得られた『呼気13CO2排出曲線のピーク値に達する時間(Tmax)』などを解析する予定であった。 最終的には統計解析の段階までには至らず、サンプリングの段階に留まり、サンプリング数11例、うち抗精神病薬内服が5例、未内服・健常者が6例であった。 症例が集まらず、このサンプリング数だけでは統計データは出せなかったが、この抗精神病薬内服と未内服・健常者間で胃排出能の曲線は異なる印象はあった。 また未内服時の統合失調症の症例自体が少なく、そのサンプリング自体が希少だったが、一患者において、抗精神病薬内服開始前後の二点においてサンプリングを行えた。あくまでもこの一例の中での比較であったが、抗精神病薬内服前後において、胃排出能の変化を疑う所見については2019年6月に開催された日本精神神経学会で症例報告の発表を行った。
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