研究実績の概要 |
本年度は、疾患の有無や領域の違いにより発現量に影響を受けない内部標準遺伝子の同定を行った。まずこれまでの遺伝発現解析において推奨され多く用いられてきた内部標準遺伝子13個の中から、統合失調症及び健常例の前頭前野組織におけるRNAシークエンスを用いたデータベース(CommonMind Consortium)、前頭前野の3層および5層の錐体ニューロンのマイクロアレイデータ、前頭前野の3層のパルブアルブミン陽性抑制性ニューロンのマイクロアレイデータ(Arion et al. 2015, Enwirght et al. 2018)を参考に、統合失調症の前頭前野で有意な変化を示さないものとして、GAPDH、GNAS、PSMB2、GUSB、UBC、RPL13Aを選択した。そして、これらに我々がこれまで内部標準遺伝子として多く用いてきたACTBとCYCを加えた8遺伝子について、同性で年齢と死後経過時間が近い健常例と統合失調症例のペア10組の背外側前頭前野、一次視覚においてその発現の安定性をreal-time PCRによって検討した。まず各遺伝子の発現を他の個々の遺伝子で標準化した値について症例間の標準偏差を求め、その平均値Mを算出し、発現の不安定性の指標とした。その結果、M値が低い順に遺伝子を並べると、前頭前野ではGNAS, PSMB2, GAPDH, CYC, ACTB, GUSB, RPL13A, UBCとなり、一次視覚野ではPSMB2, GAPDH, CYC, ACTB, GNAS, RPL13A, UBC, GUSBとなり、PSMB2, GAPDH, CYCが領域の違いや疾患の有無にかかわらず安定した発現を示す内部標準遺伝子候補であることが示唆された。
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