研究実績の概要 |
初年度、産後の母親の抑うつ状態、及び、母親から子へ向けた愛着形成の問題(ボンディング障害)と、妊娠期に女性が主観的に認識しているソーシャルサポートとの関係を検証した。二年度目は、母親の被養育体験およびソーシャルサポートと、産後のボンディング障害との関係を検証した。また、虐待や自死にも関連する躁状態、及び抑うつ状態の評価尺度の因子構造、全周産期期間における信頼性・妥当性も確認した。さらに、東日本大震災と非被災地に住む周産期女性への影響についても検証した。三年度目は、産後の抑うつ状態に関する危険因子の検証を行ない、うつ病の既往が、妊娠期の損害回避的認知および抑うつ状態の危険因子であることや生物学的な関連因子も明らかにした。四年度目は、周産期うつ病の危険因子の一つである大うつ病の既往を評価する尺度の、周産期女性における信頼性・妥当性、及び因子構造を確認した。また、自殺念慮の危険因子や、初産婦と経産婦における違いについても調べた。 今年度は、妊娠中の女性の気質と性格、特に産後うつ病の危険因子である、損害回避(HA)及び自主性(SD)と、産後抑うつ症状に対するソーシャルサポートとの関係について調べら。結果、ソーシャルサポートが乏しいと妊娠中の高HAの女性の抑うつ症状を悪化させることを示した(Frontiers in Psychiatry, 2022)。さらに、子どもの頃の経験から導き出されたその人自身の親の態度を評価する、Parental Bonding Instrument(PBI)の、周産期の日本人女性における信頼性と妥当性を確認し、ケア、干渉、自律の3因子構造を持つことを明らかにした(Scientific Reports, 2021)。
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