研究課題/領域番号 |
17K16376
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鶴身 孝介 京都大学, 医学研究科, 助教 (20760854)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経科学 / ギャンブル障害 / 依存症 / 嗜癖 / 行動嗜癖 / MRI |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス流行に伴い、患者リクルートの推進に困難をきたしたため、既存データの整理、解析を中心に活動を行った。 ギャンブル障害 (Gambling Disorder: GD) 患者の病態の一つにリスクの高い意思決定がある。ところが、リスクの高い意思決定がギャンブルのような金銭が絡む状況に限られるのか、他の状況にまで及んでいるのかはわかっていない。また、意思決定はフレーミング効果をはじめとする認知バイアスの影響を受けることが知られている。フレーミング効果は問題の提示の仕方により印象が変わり、意思決定に及ぼす影響のことであり、一般にポジティブな文脈下では確実な選択肢を、ネガティブな文脈下では不確実な選択肢を選好する傾向が強まる。しかし、GD患者がフレーミング効果の影響をどの程度受けるのかについても検討されていない。そこでGD患者と健常対照群に対し、金銭・健康に関わるシナリオにおいて、それぞれポジティブ・ネガティブな状況の意思決定を調査する行動実験を行った。健康に関わるシナリオにおいては、状況がポジティブであるかネガディブであるかに関わらずGD患者の選択に健常群との有意差は認められなかった。金銭に関わるシナリオのネガティブな状況においても同様に群間差は認めなかった。一方、金銭に関わるシナリオのポジティブな状況においては、GD患者は健常群と比較して、よりリスクの高い不確実な選択肢を優位に多く選択していた。すなわち、この条件でのみフレーミング効果が減弱していたということになる。この結果はGD患者のリスクの高い意思決定は金銭を獲得できるような文脈に限定され、金銭を失うような文脈や、そもそも金銭と無関係な文脈ではリスクを追い求めないことを示唆した。この成果を英文誌に投稿し受理された。また、一般向けのWebを介した講演も4回行うなどアウトリーチにも尽力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス流行に伴い、その対策に多くの労力を割かれることとなった。さらに、本学の指針が厳格であったため、被験者リクルートの推進に困難をきたし、既存のデータ整理などが業務の中心となり、研究遂行にやや遅延を来たした。一方で、整理したデータの中から、フレーミング効果を検討した意思決定課題に関する成果を英語論文化することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
やや遅れが生じているデータ取得を完了し、得られたデータを解析する。その結果をまとめて、学会発表、論文受理を目指す
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行に伴い、その対策に多くの労力を割かれることとなった。さらに、本学の指針が厳格であったため、被験者リクルートの推進に困難をきたし、既存のデータ整理が業務の中心となり、研究遂行にやや遅延を来たした。2020年度における新型コロナ対策の経験を基にして、実現可能な形で研究を推進し、リクルート費用や周辺物品をはじめとする各種実験遂行に必要な費用や学会発表、論文投稿に必要な費用に充当する予定である。
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