統合失調症44名の脳波、40例の機能的MRIのデータを取得し、そのうち19名に関しては縦断的解析のため2回目の測定も終わっている。背景情報を一致させた健常者ついては、51名のデータを取得し、そのうち14名は二回目の測定を終えた。 初回測定の横断的解析の結果、脳波においては、40ヘルツ刺激に対する聴性定常反応が統合失調症群で低下しており、これは多くの先行研究の知見と一致するもので あった。40ヘルツ以外の周波数帯域に対しての反応では、統合失調症群と健常者群で統計的に有意な差は認めなかった。また、機能的MRIでは統合失調症群では80ヘルツ刺激に対するBOLD信号の増大が見られた。 縦断的解析では、2回目の測定では、横断的には健常者と比較して脳波における40Hz刺激に対する聴性定常反応の障害がみられていたが、経時的な変化は有意ではなかった。症状との関連では、統合失調症患者において、脳波における聴性定常反応の改善(健常者の平均に近づく)が大きいものほど、幻聴症状も改善していた。 また、一回目の測定、2回目の脳波測定の両方において、刺激中の自発活動としてのγ帯域皮質活動『自発γ』が統合失調症群では上昇しており、これは機能的MRIでの80Hz刺激に対するBOLD信号の 増大と相関がみられることが分かった。
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