人間における精神機能などの生理機能は、特定の神経の神経活動と相関することが知られている。中枢神経系は、特にセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのモノアミン神経に広く支配されており、様々な精神疾患、精神機能がモノアミン神経機能と相関すると理解されており、それに基づいた薬物治療が治療の中心となっている。そこで、時間分解能に優れたシステムとして、瞬間的なモノアミン神経活動を意識清明な実験動物において測定できるツールとして、TetOシステムやFLEXシステムを利用して、アデノ随伴ウイルス下にG-CAMP6蛋白質を発現させ、細胞内のカルシウムイオン濃度に依存した蛍光強度の変動を利用して、特定神経の神経活動を測定することを可能とするファイバーフォトメトリーシステムを立ち上げた。同システムにより、リアルタイムにセロトニン神経活動、ノルアドレナリン神経活動、ドーパミン神経活動を測定することに成功した。FLEXシステムを利用して、DATCreマウスの腹側被蓋野に特異的にG-CaMP6を発現させ、急性の嫌悪刺激を与え、同部位のドーパミン神経活動が上昇することを発見し、2018年度にNeuroscience誌に掲載された。同成果においては同年度の日本神経科学大会にて発表した。また、TetOシステムを利用して、Tph-tTAマウスの縫線核やDbh-tTAマウスの青斑核に特異的にG-CaMP6を発現させ、急性の痛み刺激を与えた際に、それぞれセロトニン神経活動、ノルアドレナリン神経活動が上昇することを発見し、同所見については同年度の日本生理学会大会において発表した。これらの所見は精神生理機能の瞬間的な変動の理解を深めるものであり、精神疾患、精神症状の病態理解や薬物治療戦略の理解の一助となりうる面で意義があると考えられる。現在は更に研究を進行させている。
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