研究課題
骨髄間葉系幹細胞(BMSC)治療は、神経保護作用や免疫調整作用をはじめとする様々な治療機序から、酸化ストレスを標的としたアルツハイマー病(AD)治療薬としての可能性がある。ADモデルマウスに対するBMSC治療介入を行い、治療による改善効果に加えて脳内酸化ストレス動態の側面から治療メカニズムを明らかにすることを目的とする。また、治療による酸化ストレス動態改善効果の解析を通じて、AD病態形成における酸化ストレスの動態について、その分子生物学的メカニズムを含めて明らかにすることを目指している。生後7.5ヶ月齢のADモデルマウス(APPswe/PSdE9マウス)に対し、生後6週齢のSDラット骨髄から分離培養したBMSC 3×10^5個を細胞培養用の培地に懸濁し尾静脈より経静脈的に移植した。コントロール群としては細胞培養用の培地のみを経静脈的に投与した。治療1ヶ月後より行動学的評価としてモリス水迷路試験や新奇物体認識試験を行った。その後脳内酸化ストレス動態の評価のため、血液脳関門を通過するredox感受性プローブをマウスの尾静脈より投与し電子常磁性共鳴(EPR)信号を測定するイメージング実験(In vivo EPRイメージング)を行った。これらの評価を終えたマウスは9ヶ月齢で犠死させ、脳の組織学的評価として脳内アミロイドβの定量評価や脳内ミクログリアの動態の評価を行った。また、マウス脳の生化学的評価として、ニトロチロシン、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性などの定量評価を行った。
2: おおむね順調に進展している
ADモデルマウスに対するラット骨髄間葉系幹細胞移植実験はほぼ計画通りに進行しており、治療介入による脳内アミロイドβ(Aβ)の減少効果を確認できている。また、In vivo EPRイメージング法による脳内酸化ストレス状態の改善効果も確認できている。現在は治療介入後のマウス脳の各種生化学的解析を行っている段階である。
治療介入効果の評価のため、治療介入後のマウス脳の各種生化学的解析を進める。また、酸化ストレスをはじめとした治療メカニズムの解析のため培養系細胞を用いた実験を追加する。また、治療プロトコルを現行の単回移植から複数回移植に変更した実験系を追加することでさらなる治療介入効果を検討する予定である。
主に消耗品や実験動物について、本年度は当研究室のストック分がある程度使用できた。次年度以降は実験動物や各種生化学解析や細胞培養のための試薬やプラスティック製品などの消耗品の購入に使用する予定である。
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