研究課題
間葉系幹細胞(MSC)治療は、神経の保護作用や免疫調整作用をはじめとする様々な機序から、酸化ストレスを標的としたアルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)新規治療法としての可能性がある。本研究では、ADモデルマウスに対するMSC治療の改善効果を明らかにし、さらに生体内の酸化ストレス動態の側面からその治療メカニズムを明らかにすることを目的とした。2018年度までの成果として、MSC治療はADモデルマウスの空間記憶能を改善させ、脳アミロイドβ(Aβ)病理を改善させることを明らかにした。また、MSC治療はADマウス脳における酸化還元状態を改善させることが示唆された。2019年度では、MSC治療がADモデル動物におけるAβ病理を改善するメカニズムの一つとして脳内ミクログリア機能に着目した検討を主に行った。脳の組織学的検討では、MSC治療介入を行ったADマウス脳の大脳皮質ではミクログリアの活性が有意に減少していた一方で、Aβプラーク周囲のミクログリアに着目した場合、MSC治療介入を行ったADマウス脳のミクログリアは細胞体内にAβを取り込む細胞の割合が有意に多かった。また、ミクログリアによるAβの取り込みに重要な役割を果たすCD14が陽性であるミクログリアの割合もMSC移植によって増加していることがわかった。培養系のMG6細胞を使った検討においても、MSC処置はCD14の発現を増加させることによってAβの取り込み能を促進させることが示された。結論として、ADモデルマウスに対するMSC移植治療は、ミクログリアのAβ取り込み能を促進させることによって脳内Aβ病理を改善させる効果があり、ADモデルマウスの行動障害を改善させることが示された。このメカニズムにはMSC移植による脳内酸化ストレス状態の改善が関与していることが示唆された。
すべて 2019
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Journal of Alzheimer's Disease
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